南山大学

 

研究活動 活動報告

 

「宗教組織の経営」についての文化人類学的研究

[開催日] 日時:2016年12月03日(土)13:00-18:00
[会場] 南山大学B棟B21教室
[講師]

藏本龍介、岡部真由美、清水貴夫、田中鉄也、門田岳久、住原則也、 白波瀬達也

概要

  • プログラム
  • <シンポジウム概要>  
    宗教組織はどのように「経営」されているのか。つまりいかなる目的をいかな る方法で達成しようとしているのか。そしてそのプロセスはどのように展開して いるのか。本シンポジウムではこの問題について、タイの仏法センター、ブルキ ナファソのコーラン学校、インドのヒンドゥー寺院、日本の巡礼観光会社を事例 として、人類学的なアプローチから分析する。つまり世界各地に存在している、 目的・構成員・規模・持続性などにおいて多種多様な宗教組織を、民族誌的に叙 述する。こうした作業を通じて、これまで等閑視されてきたような宗教実践・現 象の一側面を浮き彫りにすることを目的とする。
  • <各報告・質疑応答の概要>
     岡部氏は、仏教国タイにおける、仏教寺院ではない仏法センターという新しい 組織の成立・展開について分析した。仏法センターはタイの宗教制度上、「宗教 組織」とは位置づけられていない。それゆえに社会との関わり方や組織構造にお いて、従来の仏教寺院とは異なる特徴をもっていることが紹介された。
     清水氏は、ブルキナファソにおけるイスラーム教育を担う学校のあり方が、歴 史的に変遷していく様子について分析した。そして宗教的な目的の実現と、組織 を維持するという課題のせめぎ合いの中で、伝統的なクルアーン学校が都市に進 出したり、あるいは近代教育システムに取り込まれながら存続を図っている様子 が紹介された。
     田中氏は、インドのヒンドゥー寺院を事例として、一つの寺院に二つの異なる 女神が同居するという事態について分析した。この事例においては各女神を管理 する運営母体が異なっており、それが寺院や女神の位置づけをめぐる齟齬として 現れている。一方でそうした齟齬の解消も目指されており、その過程で新しい神 話が創出される様子などが紹介された。
     門田氏は、日本の佐渡と沖縄を事例として、巡礼地経営という問題について分 析した。ある場所が巡礼地・聖地になっていく過程で、そこに携わる組織の形態 や、諸組織の関係が再編されていく様子、さらには宗教と世俗という境界が新た に線引きされていく様子が紹介された。
     総合討論においてはまず、住原氏より、@研究会の試みは人類学的、民族誌的 な記述に重点を置くものであったが、はたしてそれだけでいいのか、A経営とい う分野に入る以上、必然的に経営学の従属的な立場になってしまうのではないか、 人類学が主体となった組織経営研究はどこにありうるのかという質問が提示され た。次に白波瀬氏より、@世俗化の議論を前提としているのか。宗教現象自体は 活性化も見られるが、その中心が既存の宗教組織の外にずれていっている、離れ ていくところに宗教組織の経営難がみられる、これが研究会の立脚点であるのか、 Aシンポジウムの全体設定に個別の事例が対応していないのでは、という質問が 提示された。これらの質問を元に各報告者とコメンテーターの間で活発な議論が 交わされた。
     なお、今回のシンポジウムは講演録として2017年3月に刊行する予定である。


当日の様子

質疑応答の様子

質疑応答の様子


会場の様子