南山大学

 

研究活動 活動報告

 

海人の考古学:東南アジアからオセアニアへ

[開催日] 日時: 2015年1月25日(金)13:30-17:30
[会場] 南山大学人名古屋キャンパスR31教室
[講師]

後藤 明(南山大学)、小野林太郎(東海大学)、石村智(奈良国立文化財研究所)

概要

  • プログラム
  •  この研究会では日本の民俗学者、民族学者、歴史学者あるいは考古学者が提唱してきた海人・海民という概念を近年の人類学の成果のもとに再検討し、日本発の分析概念が国際的に通用するか否かを検討することを目的とする。すなわち古代・中世日本や東アジアの事例をもとに提唱されてきた「海人・海民」という概念が他地域、具体的には東南アジアやオセアニアの文化動態を理解する上で有効か否かを検討する。
     まず後藤は宮本常一、谷川健一、大林太良、網野善彦、森浩一などが提唱してきた海人・海民という概念をリビューし、その上でオホーツク文化や弥生文化における考古学的事例あるいは日本古代史の海人族(あまぞく)などを概観したあと、その構造的なモデル化を行うために民族事例、インドネシアの海上時製作民・マレ島民の事例を紹介した。
     小野は東南アジアにおける現代の海民であるサマ・バジャウ人の事例を紹介しつつ、こうした東南アジアの海民集団や社会の系譜を考古学的に検討する。その上で考古学者ソルハイムがかつて提出したヌサンタオ仮説を紹介しつつ、先史時代に見られる海民的要素やオセアニアのラピタ集団につながる可能性のある事例などから検証し、東南アジアにおける海人・海民的文化・社会要素がどのような系譜、あるいはプロセスを経て形成された可能性があるかについて、考古・民族学的資料を中心に検討した。
     石村はオセアニアにおける社会階層化について、特に西ポリネシア地域を対象に、初期植民者であるラピタ人の段階から、階層化社会が発展するトンガ海洋帝国の段階に至るまでの過程を検討する。そのうえで、海を通じた交易・交流が王権を生成するプロセスに着目し、同様に海洋世界である東南アジア地域とオセアニアとの間に、どのような差異があるのかについても議論した。

講演する小野氏

講演する石村氏

総合討論の様子