南山大学大学院人間文化研究科 教育ファシリテーション専攻(専攻作成ページ)

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研究の紹介

教育ファシリテーション専攻における研究テーマには、かなりの広がりがあります。ファシリテーションとは、「促進すること」と言ってもよいでしょう。何をファシリテートするかにより、研究領域が定まるとともに、研究の広がりと深まりが生まれます。
本専攻が対応している、学校心理士の受験資格に代表されるように、学校心理学領域の研究はひとつの大きなテーマです。しかしそれだけにとどまらず、看護・医療の領域、企業・組織の領域、国内・国際的な広がりをもつコミュニティづくりのフィールドも、ファシリテーション研究の領域といえるでしょう。

以下ではその一部を紹介していますが、右欄から「修士論文」を選択していただくと、過去のすべての修士論文題目を見ることができます。これを見ていただければ、多様なフィールドの院生が集い、様々な領域での研究がなされてきたことがおわかりになるでしょう。

なお、本専攻の「ラボラトリー方式の体験学習」を用いた教育プログラム開発と研究は他大学院にない教育研究アプローチです。「ラボラトリー方式の体験学習」とは、1946年グループダイナミックス研究の創始者ともいえるK.レヴィンらのワークショップから生まれた学習方法です。NTL Instituteに1947年より引き継がれ、全世界の人々が集まり、今日までさまざまなワークショップ、とりわけ人間関係に関わるワークショップが開催されています。2006年4月、南山大学人間関係研究センターとパートナーシップを結んでいます。
「ラボラトリー方式の体験学習」とは、「特別に設計された人と人が関わる場において、“今ここ”での参加者の体験を素材(データ)として、人間や人間関係を参加者とファシリテーターとが共に学ぶ(探求する)方法(津村、2007)」といえるでしょう。

学校教育フィールド

今日、学校教育現場ではさまざまな問題をかかえています。児童・生徒の学力の低下の問題、不登校や問題行動の多発、人間関係能力の育成の問題など、かなり幅広い問題を解決していかなければなりません。そのために、児童・生徒がモチベーションを高くもって学ぶための授業づくり、特別支援のための新しい教育方法の開発、人間関係づくりの授業開発、その他、教師・保護者との関係構築とそのための働きかけ、ひいては学校組織全体のコーディネーションに関わる研究も急務です。多くの問題は、人と人とが関わる人間関係の問題であるといっても過言でないと思います。こうした問題状況へのアプローチとして、一人ひとりの人間の尊厳を大切にしながら、学ぶ喜びを生み出すことができる教育現場づくりのためにさまざまな角度からの研究が必要でしょう。

【このフィールドと関連する修士論文例】

●協同学習を用いた社会的スキル習得のための授業プログラムの開発 −顧客満足度(CS)理解のための教育を通して−

●併設型中・高一貫校における人間関係づくりの実践的研究 〜協同学習による高1ギャップ解消の試み〜

看護・医療フィールド

看護・医療フィールドにおいても、ファシリテーションの視点は、看護師養成の現場はもちろん、現代の看護・医療現場においても重要な課題になってきています。複雑化する医療技術やひとりひとりの命の尊厳を大切にした医療アプローチの展開にともない、チーム看護、チーム医療のためのチーム作りやコミュニケーションスキルの開発研究などの重要性が増してきています。看護師さんにとってみても、自らの他者(医師や患者)との対人関係スキルの向上とともに、看護師の人間関係能力を育成するための教育プログラムの開発と教育力の向上が求められています。また、患者さんのセルフサポートグループを運営するためのグループファシリテーション研究など、教育ファシリテーション研究に対する幅広いニーズがあるでしょう。
なお専攻に所属する教員は、こうした看護・医療活動に対するコンサルテーションをはじめ、看護師のための人間関係づくりトレーニングのプログラムの開発や実際のトレーニングにも関わっています。

【このフィールドと関連する修士論文例】

●看護学教育における協同学習の効果に関する研究

●薬剤師−患者関係の再構築:ロールプレイ実習によるコミュニケーションプロセスの検討

企業・組織フィールド

企業・組織フィールドにおいては、ファシリテーション、ファシリテーターといった概念は、その活動において今や重要なキー概念になってきていると言えるでしょう。ただし、企業活動におけるファシリテーター、ファシリテーションは、会議進行のファシリテーターであり、ファシリテーションであるようです。いかに会議に集まったメンバーが意見を言いやすい雰囲気を作り活性化し、会議の成果に結びつけることができるかが大きな課題であると言ってもいいでしょう。このことは、成果に焦点が当たりやすく、ともすればそこにいるメンバーの気持ちや関係性に気づかずに事柄だけが進むことも考えられます。本専攻では、会議参加者の一人ひとりの中に生まれる気持ちや互いの関係性についても、時にはコンフリクトに対峙しそこから学び成長が起こるようなファシリテーションを目指したいと考えています。いわば、会議の進行を促進するファシリテーションとともに、そこにいるメンバーが人間的に成長することを促進することができるファシリテーターのありようを重視しています。
こうした活動の一つとして、「リーダーシップトレーニング」や「メンタリング導入のトレーニング」など、人材育成のためのコンサルテーションや研修の開発・実施も行っています。

【このフィールドと関連する修士論文例】

●コーチング研修を日常業務に活かすための支援についての研究

●企業組織の関連性開発におけるラボラトリー方式の体験学習の影響 −社会関係資本とシェアード・リーダーシップの観点から−

コミュニティづくりフィールド

コミュニティづくりフィールドについては、国内における地域コミュニティづくりやフィーチャーサーチに代表されるような学校教育などに関わるステークフォルダーがともに集い、民主的なディスカッションを通していかにコミュニティを創り出していくかといったことに強く関心をもっています。環境教育に関わるコミュニティづくりなども大切な教育・研究のフィールドであります。
このことは、国際協力として支援が行われている各国、各地域でのコミュニティづくりにもファシリテーションのアプローチは重要な視点と言えます。これまで、経済的な支援が中心であった我が国の国際協力に関わる支援も、ハードだけではなく、いかに持続可能な国創り、地域創りができるかが大切な視点になり、コミュニティづくり、とりわけ人間関係づくりのトレーニングの手法も援助の中心的な活動になりつつあります。地域の人々、それをサポートする地域リーダー、そしてさらにそれをコーディネートするNPO、NGOのスタッフ間のコミュニケーションは重要です。そのためそれをファシリテート(促進)することに関する研究は急務ともいえるでしょう。

【このフィールドと関連する修士論文例】

●開発援助における学習促進者としての外部者の役割 ―ブルギナファソにおける調査活動のファシリテーション論的視点からの考察―

●レクリエーション支援者のホスピタリティ・マインド養成におけるラボラトリー方式による体験学習の活用 ―再考 レクリエーション運動に今求められるもの―

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