南山大学

 

研究活動 活動報告

 

国際化推進事業関連国内調査

[開催日] 2015年8月13日(木)〜19日(水)
[調査地] インド・タミルナードゥ州
[担当]

国際化推進事業担当研究員・宮脇千絵

概要

    インド・チェンナイにおいてマドラス大学のG.Ravindran教授を訪問し、来年度に南山大学で予定しているシンポジウムについて打ち合わせをおこなった。

    Ravindran教授は、デジタルメディアや映像文化に関する研究をおこなっており、2004年のスマトラ島沖地震後のチェンナイ周辺の復興とメディアの役割についても造詣が深い。また、震災前後からマドラス湾の漁民の調査研究をおこなっているBharathi氏(South Indian Fishermen’s Welfare Association)には、調査地である漁村に案内してもらった。

    チェンナイ周辺では、海岸沿いに居住する漁村が津波の被害に遭った。災害からすでに10年が経過し、家屋などが再建され、一見すると村は再生しているかのようだった。しかし支援金の不等配分や漁村のスラム化、政府によるビーチの観光開発と漁民の移住に関する軋轢など、依然として課題が多いことが分かった。また漁民からは、震災で漁船や漁業道具を失ったことに加え、世代間ギャップによって漁業に関する互助関係や、知識や技術の伝承が途絶えつつある声が聞かれ、彼らの生業そのものの存続も危ぶまれる状況にある。

    復興の名のもとに経済的振興を目指す政策と地域社会のあり方、「災害以前の暮らし」を求める人びとが抱えるさまざまな隔たりやずれなど、震災からある程度の時期を経てなお浮かび上がる問題点は、被災地における普遍的な課題として捉えることができ、今後もRavindran教授と、災害や復興に関して学問が果たしえる役割について議論していきたい。

マドラス大学のG.Ravindran教授や研究室のみなさんと

マリーナ・ビーチの漁民への聞き取り

海岸部の漁民と漁船の状況