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おすすめ情報

おすすめ情報 その2

2013.1.21 藤田

 

  昨年度,おすすめ情報を書け,と言われて書いたのが9月。そのすぐ後にエッセイを書けと言われて書いたのが昨年の1月末。真面目に原稿をその都度提出しているはずなのですが,エッセイ,掲載されていないような…。はたして,このおすすめ情報原稿の運命やいかに。皆様のお目に留まることを祈って。
 では,本論。
 他人に何かを勧めるのは,なかなかに難しいことだと思います。勧める物事に対して,こちらがそれ相応の価値を認識し,紹介することに情熱を持っていないといけないからです。それほど情熱的に生きていない上に(からこそ?),大して引き出しも多くないワタクシですので,うんうん唸りながら10分ほど考えて,おすすめ本を紹介するという手に逃げることにいたしました(あれ,デジャヴ?と思った人はこの欄を読み込んだ方です。素晴らしい)。

 ■鈴木光太郎(著) (2008)オオカミ少女はいなかった 心理学の神話をめぐる冒険 新曜社

 これまた2600円+税と,ちょっと高めの上,それほど新しくもない本書ですが,心理学を志す方で「オオカミに育てられた子どもが昔いたんだって〜!」とか,「サブリミナル広告って効果があるらしいよ,怖いね〜」なんて思っている方に,是非にとお勧めしたい一冊です。ある意味,「心理学的知見として紹介されることのある話の裏話」的な本です。
 本学で心理学的授業をすると(私は「心理学」という授業は受け持っていないので,もっと漠然とした授業です),「アマラとカマラの例からも判るように…」と例示してヒトとは何かを論じようとする学生が毎年結構な数出てきます。どうも,高校なんかでも「オオカミに育てられた子」の話は教材として(?)取り上げられるのですね。残念ながら,あのお話は眉唾物である,というのが本書の一節で論じられています。
 眉唾な言説を根拠に自分の主張を展開する。これは,大変危険です。科学的知見とはどのようなもののことを言うのか,大昔の教科書に紹介されていたことはず〜っと正しいのかと言ったことに頓着せず,無批判に情報を取り込むとそのような(砂地にお城を建てようとするような)ことになってしまいます。
 心理学の授業を受けた後で読んだ方が,より衝撃は大きい(場合もある)のかもしれません。しかし,15コマの講義が終わってもやはり最終レポートに「アマラとカマラが…」と書いてくる強者がいることから,一旦刷り込まれてしまうとヒトはなかなか自分の信念を変えられないようだと悟りました。そこで,「心理学っぽいことが書いてある本やTV番組」に毒される前に,「ちょっと心理学って面白そう」と思っている方には是非お読みいただきたいなぁと思い推薦いたします。


                                          (藤田)

 

 

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