2003年7月の雑記




≪7月3日≫

★近頃よく古本を購入する。主にトマス・アクィナス関係の研究書で買いそびれていたものを集めているのだ。トマスについての本は分類としては西洋中世哲学に属するが、この分野の研究書はややマニアックだということもあって発行部数が少なく、けっこう高価なものが多い。学生の時にはお金がなくて、欲しくても買うことができなかった。つい買いそびれてしまった本も多い。そういう本の多くは今では品切れになっていたり絶版になっていたりする。だから古本を探すしかないのだ。うれしいことに日本の古本屋さんはなかなか素晴らしく、インターネットで検索したらたくさん見つかった。大学から支給される個人研究費で、ありがたく買わせていただいている。中には希少本となっていて、ものすごい高値がついているものもあり、そういうのは残念ながら見つかっても買えないが。

探しても探してもなかなか見つからないものもある。その中のひとつに、山田晶先生著の『世界の名著・続5「トマス・アクィナス」』(中央公論社)がある。これは2000円くらいのもので、私が学生だった時にはどこででもザラに見つかる本であった。これはハードカバーの本である。それと別に「中公バックス」シリーズのペーパーバック版もある。ペーパーバックとは、文庫本や新書のような簡易な装丁の本である。ハードカバーに比べて安価なのだが、あまり丈夫ではなく長持ちしないという弱点を持つ。私が学生時代に買って持っているのは、この中公バックス版である。しかしこの本は頻繁に使わせていただいたので、ペーパーバックの宿命で、かなり痛んでページがはずれたりしている。そこで新しいのに買い換えようと思ったのだが、残念ながら「品切れ」でどこにも無いのだ。しまった、やっぱりちゃんとしたハードカバーのものを買っとけばよかった。

しかたないので古本を探すことにした。ところがどういうわけか、『世界の名著』(全部で80巻以上もあるシリーズ)は古本屋にけっこうたくさん出ているのだが、この「トマス・アクィナス」は見あたらないのだ。同じ山田先生の「アウグスティヌス」はけっこうあるのに・・・。無いはずはないと、けっこう努力して方々をあたってみた。しかしやっぱり見つからない。ひょとしたらこの巻だけ希少本になっているのだろうか?(『世界の名著』の全巻そろいのセットならあって、それには含まれているのだが・・。)

もうダメかな、復刻されるまで待つしかないかな、と私は半ば諦めていた。ところがである。先日友人の結婚式のために東京に出た際に吉祥寺の古本屋にちょっと立ち寄ってみたら、なんとあったのだこれが。お店の片隅にまるでゴミのように積み上げられた雑本の中にポツリと。いや〜驚いた。急いで本をかき分けて取り出し、購入。値段は600円。安いもんだ。今回の東京出張は、思いがけぬ収穫があった。



≪7月6日≫

★水泳高飛び込みの日本代表選手、宮嵜多紀理(みやざき・たきり)さんが今日、「世界水泳バルセロナ2003」のためバルセロナに旅立って行かれたそうである。彼女のお兄さんは私のお友達である。彼から次のようなメッセージが届いた。

本日、世界水泳のため バルセロナへ旅立ちました
がんばってくれるとは、思いますが
ちなみに13日と16日に(現地時間だとオモウ)試合があるそうです
テレビなり新聞なりでチェックしてみてください
部屋にテレビないんだっけ。 すべて朝日系列ですよ
いまいちマイナーなスポーツなので、競泳ばっかりなんですが
少しくらいはニュースになるとおもいますので
応援よろしく おねがいします。
み!

最後の「み!」というのは、「みやざき」の略だ・・・と思う。

というわけですので、みんなで宮嵜選手を応援いたしましょう!よろしく〜!
家ではほとんどテレビを見ない私ですが、久しぶりに見ることにいたしましょう。

★ところで、ザビエルハウスのADSLが2・3日前から不調である。さっぱり繋がらなくなってしまった。現在原因を解明中だが、復旧にいつまでかかるか不明。それゆえその間、特に夕方以降は掲示板、メールなどのお返事が遅れてしまうことがございます。かくなる事情のため、なにとぞどうか悪しからず御宥恕くだされたく候。



≪7月9日≫

★今週金曜日にNCPという南山のカトリック信徒の教員の会の定期集会が開かれるのだが、そこで1時間ほど何かお話をするように命じられている。毎回順番で誰かがお話をすることになっており、その順番が回ってきたというわけだ。お相手は私なんかが足元にも及ばぬ大先生方ばかり。下手に哲学の話なんかするのは無謀というものである。そこで、私の趣味についてのお話をさせていただくことにした。オルガンについてのお話である。趣味とは言っても、特にバッハのオルガン曲については私なりにかなりの思い入れがある。今回はバッハのコラール前奏曲「人よ汝の大いなる罪を嘆け」の演奏(CD)をいくつか聞き比べ、それを基に「音楽と祈りを考える」という題でお話をさせていただくことにした。たいしたお話はできそうもないが、自分なりにこれまで考えてきたことを率直に述べて、先生方のご教示を願いたいと思っている。ありがたいことに、この会にはお弁当が出される。私の話はどうせつまらないだろうが、どうかお弁当と世界の名手が弾く演奏の数々を楽しんでいただきたいものである。



≪7月12日≫

★ザビエルハウスのADSL(インターネットへの接続)がようやく復活した。先週末ごろに突然接続が不安定になり、インターネットもメールもまともにできなくなってしまった。原因不明。それからもうかれこれ1週間ばかりずっと、インターネットが使えない状態になっていた。いろいろやってみたがダメなので、ほとんど諦めモードになっていたところだった。うちはDION(KDDI)のADSLを使っている。先週の日曜日にDIONのサービスセンターに連絡して相談してみた。DIONの方々は礼儀正しく親切に対応してくださり、いろいろと手を打ってくださった。ひとつひとつ順番にやってみたが、しかしどれもうまくいかず、ついにモデム(インターネットに接続する機械)を交換してみることになった。

新しいモデムが今日の夕方に届いた。しかしモデムを取り替えるだけでは面白くない。そこでうちの副院長のムンカダさんと共謀して、もうひとつ別の計画を立てた。モデムが新しくなるついでに、電柱からザビエルハウスに引き込まれている古い電話線を新しい線に全面的に替えてしまうというもの。新しい電話線はムンカダさんが買ってきてくれた。これまで使ってきた電話線を思い切って鋏でブチリと切断。新しい線につなぎ替える。ノイズを軽減するべくフェライトコアも咬ませてみる。そして新しいモデムに接続。すると・・・おお見よ!見事に復活したのである、あれほどつながらなかったインターネット接続が。すばらしい。2人で健闘を讃え合い成功を祝した。

窓から外に出て電話線を交換。ここはヤブ蚊が実に多い。 みごと接続成功!勝ちほこるムンカダ氏

いやぁ〜ムンカダさんどうもお疲れ様でした。お互いヤブ蚊に刺されまくりながら頑張ったかいがありましたね。しかし何ですな、こうしてみると、いったい接続不調の原因は果たしてモデムだったのか古い電話線だったのか。どっちでしょうなあ。ま、古い方のモデムを付けて試してみたらすぐ分かるのでしょうけど、もうそんな面倒なことする元気ないですしね。まどっちでもいいですかねちゃんとつながったんだし。

何はともあれ、インターネット接続が復活してメデタイ。復旧のために努力してくださったDIONの方々、どうもありがとうございました(ちなみに今回お世話になったのは大阪部署の方々であった)。誠意ある対応をしてくださって本当に嬉しく思っています。




≪7月14日≫

★私がキクロンに初めて出会ったのは・・・そう、3年ほど前、よく晴れた春の午後のことであった・・・。去年までうちの台所をやってくれていたおばあさん(仮にイシグロさんとしておこう)に私は、食器洗い用の「スポンジたわし」を買ってくるよう命じられたのである。イシグロさんは言った、

「キクロンだからね、キクロン。必ずキクロンを買いなさいよ!それ以外のものならいらないからね!」 

ハイっわかりましたと言って私は買い物に出た。キクロン、キクロン、キクロン・・と心の中で唱えながら。あのおばあさんにこれほどまでの信頼を得ているキクロンとは、はたして如何なるものなのであろうか?まるで富山の置き薬のようなネーミングではないか・・・。この名前からして何か油断してはならぬ相手でありそうな気がした。

ああキクロンよ、君はいったい何者なのだ・・・

私は尋常ならぬ緊張と期待をもってキクロンの存在を探した。そして見つけた・・・おお!!キクロンは私の期待を裏切らなかった。



こっこの恐るべきインパクト!この驚くべき存在感!スバラシイの一言である。知らなかった・・・キクロンはたわしの革命児なのだった。お見それしました。

ラベルだけみれば、このままで立派に富山の置き薬として通用するであろう。風邪薬か腹痛の薬にたしかこういうのがあったような気がする。「食べられません」という注意書きがないかどうか私はラベルをくまなく調べたが、残念ながらその文字を見出すことは出来なかった・・・。

非常にうれしいことに、キクロンにはホームページがある(ここ)。それによると、なんとキクロンは昭和35年(1960年)、私がこの世に生を受けたのと同じ年に生み出されたらしい。そして画期的な商品としていわば一世を風靡し、40年以上たった今もなお、この分野でゆるぎない定番の地位にある偉大なたわしなのだ。それにしても、同い年だったとは・・・何か懐かしい気がしたのはそのせいだろうか・・・。



すごいっ、すごいぞ〜、かっこよすぎるぞ〜、キクロ〜ン!ひゅーひゅー!

さて、キクロンの魅力を決定づけているのは、このモデルさんであろう。キクロンおばさんというお名前の方である。ちょっとアップでごらんいただこう。



うううううっ・・・すばっ・・すばらし〜。このハイパーなお方はいったいどこの方なのであろうか?

実はすでにその素性は知られているのである。



そうでしたか・・・ドイツ人のお父さんと台湾人のお母さんを持つハーフの方だったとは。中学の時にお父さんの仕事の関係で日本に来られたとのこと・・・(何でそんな詳細まで)。すごいことに出没場所まで知られている・・高級住宅地で外国大使館が多い東京麻布(あざぶ)のナショナル・スーパー。みやびなお方だ。ご主人はシンガポールに単身赴任中のようである。好きなタレントは何とキンキ・キッズの堂本君!いやぁ奥さんお若い・・・その上に通販好きで、懸賞マニアときている。いったい何者なんだこの人は。



これが実写版のキクロンおばさん。イラストとは似ても似付かぬ美人だ(金髪じゃないのですか?)。いやだなー奥さん、おばさんだなんて謙遜しちゃってー。

実は私はキクロンの回し者である(ウソである)。しかし私はもうこのキクロンにぞっこんほれ込んでしまったのである。みなさん、スポンジたわしならキクロン、絶対にキクロンですぞ。まとめ買いもできますぞ→ここ。(やはり回し者であったか・・・)。



☆その後11月、掲示板に、なんとキクロン社の方からこの雑記についてのご感想をいただいた。気に入っていただけたようで、とてもうれしかったので、記念にここにコピーいたします。


キクロンのものです 投稿者:ぷるるん  投稿日:11月20日(木)01時53分10秒
はじめまして,私はキクロン企画室で仕事をしています。突然の書き込み失礼致します。日記拝見しましておもわずうれしくなりました。こんなにも熱く語っていただいた、いのうえさまに感謝です。キクロンおばさんの素性やパッケージについては底知れぬ思い入れいただけた上、この製品のよさをわかっていただいた、いしぐろさまにもよろしくお伝えください。そしてこの貼りあわせタイプのたわしの生みの親である(実はキクロンAクリーナー、今は定番となっている硬い不織布とスポンジの貼りあわせタイプたわしの元祖です)社長にこのことを伝えさせていただきますね。後トピックスとしましてはイタリアの雑誌ベネトンにおいてもキクロンおばさんは実に日本らしいキャラクターとして取上げられ,廃刊になってしまったかもしれませんが,雑誌ポパイにおいても調査を受けた経歴を持っています。さらに堂本剛さまとはドラマにて共演を果たしたゆえのファンであります(以前彼が主演のドラマでたわしのメーカーに就職した彼がキクロンを売り歩く,さらに夕日をバックにキクロンを手に持って考えているなんてシーンをいただきました),かなりコアなエピソードですが(笑)何はともあれこの富山の薬風パッケージはキクロンシリーズ全てにあてはまりもうひとり、キクロンおばさんの妹というのも存在しますのでまた機会があれば探してみてください(ちなみにキクロンvという商品です)キクロン株式会社にはこのシリーズ以外に沢山のキッチン、ボディバス,トイレ,洗濯用品があります。全て洗う為の道具です。ただそれらは富山の薬風ではありませんが・・(笑)使い心地や品質のよさでお褒めをいただけるよう努力していきますので,これからもキクロンをよろしくお願致します。だらだらと失礼致しました。深夜の書き込みになりましたが,明日もがんばろうと思える嬉しい日記ほんとうにありがとうございました。



≪7月18日≫

★明日19日は南山大学においてオープン・キャンパスという催しが行われる。これは受験生たちに南山大学の魅力をよりよく知ってもらうために毎年開かれているもので、キャンパス内の施設の見学ツアーや、模擬授業、各学部学科ごとの受験相談コーナーなどが開かれる。今年から名古屋キャンパスと瀬戸キャンパスの両方で同じ日に開催されることになったので、両方のキャンパスを見たい人のために、両キャンパスをつなぐシャトル・バスも運行する(片道約1時間)。このホームページを見てくれている受験生の皆さん、どうぞお気軽にお出かけください。ちょっとした南山グッズとかタダでもらえるのでなかなかヨロシイですぞ。

私は学科長および7名の学生スタッフと共に「受験相談コーナー」を担当することになっている。このコーナーは楽しい。明るくて親切な学生スタッフが待っているうちの学科のブースへ、ぜひどうぞ。実はたいへん残念なことに、うちのブースに来てくれる人は毎年極めて少ないのである(ほとんどゼロと言ってもよい。うう・・・)。せっかく相談会場(体育センター・メインアリーナ)の一番入り口に近いところにブースが設置されているというのに。(困ったことに、入り口に近いために、「トイレはどこですか?」という質問を受けることだけは非常に多いのである。まことにううである・・・)。しかーし!キリスト教学科は南山大学の学部の中で最も人数が少ない小さな学科ではあるが、カトリック系ミッション・スクールである南山の創立理念を継承する点では特別の伝統を有する、いわば最も「南山らしい」学科なのであるぞよ。そういうわけで、明日のオープンキャンパスには大いなる情熱をもって望みたい!とスタッフ一同は考えているのである。ヤルゾ〜!(とりあえず皆で食べようとお菓子買いました・・・ヒマだもんね〜)。




≪7月20日≫

★昨日の南山大学オープンキャンパスはなかなかの盛況であった。我がキリ学の相談コーナー・スタッフもよくやってくれました。その時の写真を数枚、「キリスト教学科ホームページ」の「最近の出来事」の中に載せましたので、ご覧くだされ。

★先日スポンジたわしの革命児「キクロン」をご紹介したが、その際に言及した「富山の置き薬」のことを、現役の学生たちはどうやらご存知ないらしい。なんということだ。このゲイジュツ品を知らないのは人生における損失ともいうべきであるから、さっそくご紹介いたそう。たとえば下の画像のようなパッケージの薬のことである。これはコデロン。他にもケロリン、ケロール、ミグリン、ハイトンなど、強引に関連づけるならばまるで古代ギリシャの哲学者たち(プラトンとかパイドンとか)のような名前がついている。その種類は非常に多いと思うが、その一部をここで見ることができるので、どうぞ→「富山置き薬」。富山の薬売りの栄光ある伝統は、現在にいたるまでしっかりと継承されているようだ。すばらしいことである。

せきどめコデロン。
ちなみにこれがキクロン→


★ところで突然だが、このごろEvery Little Thing (エブリ・リトル・シング。ELTと略す)がとても好きになった。3年前アメリカから帰ってきて、少しでも日本の歌謡曲をキャッチアップしようと、私はブックオフで250円で売られていたCDをたくさん買ったが、その中にELTのものも何枚か含まれていた。しかし、これまでは特に良いとも何とも思っていなかったのだ。しかしある日、車のラジオを聞いていたらELTの曲がかかって、それがなんとも感動的に良かった。家に帰ってからさっそく本棚からELTのCDを取り出し、ホコリを払って聞いてみた。ああ…これは非常に良いではないか。涙が出るほど素敵な歌の数々。どうしてこれまでこの価値が私には分からなかったのか。これはきっと、心のトビラが開かれるようなものなんだろうな。ある時ふとしたきっかけで、これまで見ても見ておらず聞いても聞いていなかったものが、ちゃんと見えたり聞こえたりするようになる。そしてその瞬間から、それは自分にとって大きな価値のあるものに変わる。変わったのはモノの方ではなくて自分の方である。こういう経験はこれまで何回かしている。クラシック音楽ではブルックナーの曲がそうだった。好きになってみたら、どうしてその良さが以前分からなかったのか不思議に思えるくらいなのである。



≪7月22日≫

★春学期の授業が終わり少し余裕が出来たので、ひとつ新しいシリーズを立ち上げてみることにしました。「神さまのお風呂」と題して、キリスト教に関連した体験談とか自分の考えを少しずつ書いていきたいと思います。たいして役に立つお話でもありませんが、どうぞよろしく〜。

★南山大学のトイレットペーパーはよろしい!
いきなりだが、私は心からそう思うのである。ふにゃふにゃしておらず、ほどよい硬さがあってシャキッとしている。そのくせ水にはサラリと潔く流れていく、実に男っぷりの良い紙なのである。ところが、こういうトイレットペーパーは世間の一般の店ではなかなか見つからないのである。ふにゃふにゃした実に軟弱なやつばかりなのだ。それを私は非常に残念に思っていた。



これがそのすぐれもののトイレットペーパー。「大口需要家向・徳用 TOILET PAPER」と書かれている。製作者は、後藤鉄工所製紙工場。鉄工所がトイレットペーパーまで手がけているとは知らなかった・・・。しかしさすが鉄工所の男たちを「ウムこれだ」とうなずかせるツワモノのペーパーだ。

この鉄工所ペーパーに惚れ込んだ私は、先日ついに南山大学の管財課の方にお願いして、この紙をザビエルハウスのためにも注文していただいたのである。そして100巻き入りの大箱が今朝届いた。ようやく私は満足した。いやぁ、よかったよかった。(ザビエルハウスは今日も平和である)。




≪7月27日≫

★久しぶりに長崎の実家に帰ってきた。わずか3日ほどしか日程が取れなかったが、親や親族の顔が見れてよかった。母はだいぶ老いたが、幸い姉の家族が一緒にいて面倒をみてくれているのでとても助かっている。長崎に帰省すると私自身もいつも姉の家族のお世話になる。今回も姉に車でいろいろなところに連れて行ってもらった。訪れた場所を少しご紹介しよう。

まずは温泉。私は温泉や銭湯が大好きで、実家に帰っても少なくとも一度はどこかのお風呂に出かける。数年前から気に入っている所は、「喜道庵」(きどうあん)である。実家と同じ西彼杵郡(にしそのぎ・ぐん)長与町(ながよ・ちょう)にあり、車で約20分。大村湾の美しい海の景色を見ながら露天風呂が楽しめる。お湯はヌルヌルしていて、いかにも効能がありそうな感じがして良い。宿泊設備はないようだが、食事はできる。長崎近郊には温泉が多く、雲仙(うんぜん)とか小浜(おばま)とかが有名だが、こういう小さなところも、のんびりできて悪くない。

外海町(そとめ・ちょう)出津(しっつ)にある「遠藤周作文学館」と「ド・ロ神父記念館」にも行ってみた。こちらも同じ西彼杵(にしそのぎ)半島にあるのだが、内側の海である大村湾とは逆の外側、東シナ海に面している。外海(そとめ)という呼び名はそこからきている。この2つの記念館はすぐそばにあるので一緒に見れて便利だ。今回私は初めて行ったのだが、なかなか良いと思った。展示物が興味深いだけでなく、まわりの海や山の景色がきれいだ。それに、受付や案内の方々が非常に親切で気持ちが良かった。遠藤周作氏の方はきれいなお姉さんがにっこりと気持ちの良い笑顔で迎えてくれたし、ド・ロ神父様の方は2人のシスターが心のこもった接待をしてくださった。営業スマイルなどではなくて、すごく自然に親切なのである。私は教会関係者として特別扱いされたくなかったから、自分が神父だとは名乗らなかった。姉と2人だったので、きっと普通の観光客夫妻に見えたと思う。この受付のお嬢さんやシスター方は、だから、訪れた人には誰にでもこんなふうに気さくに接してくれるのだろう。よいなあ長崎の人たちは。というか外海町の人たちは。外海町の美しい自然の風景と共に、この方々のすてきな笑顔が心に残った。



≪7月31日≫

★ラテン語の授業で使っている教科書の練習問題を、ようやく最後までやり終わった。その教科書とは、M.アモロス著『ラテン語の学び方』(南窓社、1970年)である。1979年に私は南山大に入学したが、一年生の時に受講したラテン語の授業で使われた教科書がこれであった。懐かしい教科書だ。昨年(2002年度)ラテン語の再履修クラスの担当を引き受けた時、まだこの教科書が出版されていることを知り、自分もまたこの教科書を使うことにした。この教科書の特徴は、文法の説明がすっきりと簡潔で、むしろラテン語の文章に直接触れることに重点が置かれている点にある。例文にも練習問題にもキケロとかセネカといった古代ローマの著述家たちの文章がふんだんに用いられている。いや実によくできた教科書だと思う。だがその反面、苦労も多いのだ。私が受講した当時、この授業は週に4回もあり、練習問題も含めてかなり綿密に教科書が読まれた。ところが受講者はたった2人だけだった。2人だけで予習や宿題を分担してこなすのはかなり必死であった。

さて、私が自分の授業のためにこの教科書を選んだもうひとつの(実は最も大きな)理由は、著者が書いたこの教科書の「練習問題・解答集」があることを知ったからである。私が一年生の時にはそんなものがあるとは知らなかった(あるいは隠されていた)。

「解答集があったのか。な〜んだ、それなら授業は楽勝ではないか。ふふふ」

私はそう思ってこれを教科書に選んだ。ところが授業の準備をしてすぐ分かったのだが、その解答集は実はそれほど準備の労力を軽減してはくれなかったのである。なぜなら、その解答集にはたしかに問題の解答は載っているのだが・・・解答だけしか載っていないからである。文章の書き換えとか格変化の解答は分かっても、文章そのものの意味はまったく分からない。しかるに、最も苦労が多く時間もかかるのが、文章の意味の解明なのである。なんてことだ・・・辞書なしで原文をスラスラ読むような実力のない私は、毎回進む予定のページに出てくる文章の意味を調べるのに多大の時間を費やさなければならなかった。古代の文人のしゃれまくった文章は、しばしば解読が困難であった。いやはや・・人にものを教えるのは大変だ。習うのとはエライ違いがある(・・・習うより教える方がずっと勉強になるように思う)。

ま、ともかく、そうこうしているうちに勉強は進み、このほどようやく練習問題を一応最後までやってしまったわけなのである。解答にちょっとした解説を加え、文章の意味を調べておいた。A4サイズで71ページ。詰まり過ぎているスペースを広げればもっとページ数は多くなりそうである。けっこうな量になったものだ。ここに置いてありますので、興味のある方はどうぞ。誤りもたくさんあると思うので、気づいた方はどうか教えてください。



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