教員essay

【ゴールドコースト通信 第一部】


5.ゴールドコーストの自然
 ここでの生活に少し慣れてくると、まわりの自然に目が行くようになった。ゴールドコーストは水路、運河、汽水湖が入り組み、複雑な地形になっている。地図を見ると運河に櫛の歯のように盛り土部分が突き出て気味が悪いような部分もある。昔、ゴールドコーストは低湿地帯であったが1930年代以降、南のTweed Riverから運んだ土を用いた工事が進められ、現在では運河の近くにも人間が住めるようになっていると聞いた。
  ボンド大学から海岸までバスに乗っていく間にも何度か水路や運河にかかる橋を渡る。また大学の敷地も湖の一部を擁している。このため、周辺に水鳥がよく見られる。また、まわりは郊外で緑が多く、珍しい花も多い。以下では、主として学内および大学周辺で見られる鳥や花を紹介したい。


5−1.ゴールドコースト周辺の鳥
 ゴールドコーストでは多種多様な鳥たちが人間の近くに住んでいる。その多くは大学の構内に飛来している。
  その中で最も大型なのはペリカン(Australian Pelican)であろうか。体長1.5メートルくらいでこの近辺の鳥の中では最大である。嘴はピンク色、背中と翼だけが黒くあとは白い。夏になって学内で空をふと見上げるとこの鳥が飛んでいるという経験が何度かあった。この鳥の飛び方は三回か四回羽ばたいた後、数秒間まったく羽ばたかずに水平飛行し、また羽ばたくという繰り返しで水平飛行のときの姿は優美である。
  かわせみが二種類いるようである。その一種類は笑いかわせみ(laughing kookaburra)である。体長45センチくらいで頭が大きくずんぐりしている。これがとまると細い木の枝が湾曲することもある。顔に茶色の横縞のような箇所があって、どこに目があるのかは慣れないとよくわからない。翼は茶色だが少し青い羽が混じっている。胸はあまりきれいでない白である。この鳥が、「カハカハ、カ、カ・・」と鳴きだすと一分近く鳴きやまない。夜明け前にこれが住居の近くで鳴くと完全に目がさめてしまう。
  もう一種類のSacred Kingfisherは体長20センチと小柄で、笑いかわせみと同類とは思えない。頭と背と尾が青く、日の光を浴びるとそれこそトルコ石のように見えることがある。ビジネススクールの裏手の茂みで何度か見た。
  構内には湖の部分も芝生の部分もあるため、水辺と草地の両方で生活する鳥がしばしば見られる。早朝に朱鷺の一種Australian White Ibisが芝生を歩いていることもある。体長70−80センチで頭と尾が黒く、黒い嘴は外側に出っ張る形に曲がっている。胴体と翼は白く、飛翔の姿は白い扇子のように見えることもある。
  鴨の一種Australian Wood Duckも大学のまわりでよく見る水鳥である。形はアヒルとあまり変わらない。全体的に灰色で、頭は茶色、翼の端が黒い。つがいで行動し、雌は眼の上下に白い縞があって雄とは少し印象が異なる。水路や大学構内の池で泳いでいるのを見たこともあるが、水辺よりも草の上にいる時間のほうが長いのではないかと思われる。
  学内でも住宅地でも頻繁に見かけ、人間をほとんど恐れないのはAustralian Magpieである。体長40センチくらいで日本のカラスより一回り小さい白黒まだらの鳥である。頭の後ろと翼の上部、尾の上部が白で他の部分は黒い。嘴は、白いペンキが剥げかかったときの色をして先端ほど黒っぽい。これは賢い鳥と見え、人間の行動をよく観察し、危険がないと判断すると2メートルくらいの距離に近寄っても逃げない。
  構内でインコを見ることも稀ではない。Rainbow Lorikeetを初めて見たときはその極彩色に驚いた。頭は青、嘴は赤、背中は緑、胸は黄色がかったオレンジ、お腹は紫である。このインコは食べ物を探して移動して歩き、ケープ岬からタスマニア島に至る東部海岸地帯に広く分布していると聞いた。
  大学だけではなく、住宅がかなり建て込んでいるように見えるところにもさまざまな鳥が悠々と暮らしている。人間は特に鳥に近寄ることもなく、遠ざけることもなく生活している。日本の子供だったら、珍しい鳥を見て追いかけたり驚かしたりするであろうが、ここの子供たちは鳥に近づこうとはしない。


5−2.大学周辺で見られる花
 ゴールドコースト周辺には亜熱帯性の気候のため、年中さまざまな花が咲いている。特に多いのはブラシ(Brush)と呼ばれる種類ではないだろうか。これは木に咲く小さな花の集合体でコップを洗うときの細長いブラシに形も大きさもそっくりである。薄い黄色もあるが、紅のほうが色あざやかである。ゴールドコーストとしては気温の低い8月に来たときに目を楽しませてくれた。この花の蜜は甘く、多くの鳥を引き付けている。
木に咲く花の中でもっともみごとなのが、ジャコランダ(jacaranda)である。これはオーストラリア原産ではなく、南米から渡ってきたという話を聞いたことがある。花は薄い藤色である。10月から11月にかけて開花する。日本の桜と同じように枝という枝に咲き、散ったときには地面に薄紫色のカーペットを作る。桜と異なり、木によって開花時期が異なり、すっかり花を散らしてしまった木の隣で別の木が開花し始めていることもある。そのため、ジャコランダの木が複数あると、比較的長い期間にわたって花を楽しむことができる。ここでこの木の花を初めて見たのは確か10月4日、ゴールドコースト市役所前広場であったと思う。最後に見たのは10月の28日か29日であったと記憶している。さらに11月の中旬にはシドニーでも見た。桜のようなはかない花ではない。なお、花は筒状で花弁は非対称である。
  2月になってから、大学構内でUmbrella Treeが開花しはじめた。この名前の由来は丸みを帯びた輪生の葉の垂れ下がるさまが傘とよく似ていることである。赤茶色の花の穂は空に向かった蛸の足のようであまり美しいとはいえないが、不思議な形につい見とれてしまう。
  日本と共通の花もある。9月に藤を見た。また、2月になってからくちなしの花の良い香りに足を止めることが多くなった。来日経験のある教員が、日本のくちなしと同じ種類であると言っていた。





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