ゴールドコーストに来てからの6ヶ月は1年にもそれ以上にも感じられる。この半年間、日本とは全く異なった環境の中で無我夢中で過ごしてきたような気がする。
ゴールドコーストに住んでいると、日本の都市部の生活にさまざまな問題があることに気づき、心配になる。本文で述べた過剰消費の問題だけではない。日本から暗い犯罪のニュースが流れてくるたびに強く感じるのは、人口稠密な都市の日陰に劣等感や怨念がこもり、うごめいていることである。また、NEETと呼ばれる無業青年の問題が聞こえてくるたびに考えさせられるのは、労働需要の低迷もさりながら、日常生活の中で社会的に成長することができない、日本の青少年の現状である。生活に便利なコンビニエンスストア、自動販売機、お仕着せの問答と事務的な処理の繰り返しの中では、社会生活を実感することはできないであろう。また、工業製品があふれ、何でも簡単に入手できる生活では、忍耐力も思考力も労働意欲もそがれてしまう。
おそらく、人間は多少不便な生活を何とかしようと努力する中から生活の知恵を身につけていくのであろう。また、ある程度互いに離れて生活する中で協力・協調関係を築こうと努力するのであろう。
とくに熱気球から緑地と運河、そしてその中に点在する人間の小さな住居を見た後には自然と人間とのかかわり、人間と人間との距離についていろいろと考えるようになった。そして、広大な新開地をもたない日本の将来を憂えずにはいられなかった。
「留学に準ずる海外出張」の残り半分では、自分の専門である労働経済学のみならず、これからの人間の生き方や日本社会のありようについて、考えを深めていくことを目標にしたい。 |