センター員の活動

【ジャワ地震被災地における宗教組織の活動No.4】                                小林寧子


 ほかにも、NU系の活動家で構成されるNGOシャリカット(同盟)でも話を聞いた。シャリカットは、1965〜66年にかけてNU系メンバーが関与した大量虐殺事件の「和解」を推進する活動を行っている。その事件で犠牲になったのは共産党系の住民であり、シャリカットはNUの中では異色の存在とも言える。今回シャリカットは長い間社会的に村八部にされていた旧共産党系の女性たちを被災者支援活動に招きいれた。針やマッサージの技能のある彼女たちは被災者を「癒す」ことによって、和解の足がかりをつかむことにもなったという。シャリカットは住宅再建の支援活動も行っており、現場のグヌン・キドゥル県の村にも案内してもらった。状況からは復興には気の遠くなるような労力が必要とされるように思えたが、「どうせ今から長いんだし」というシャリカット代表のイマム・アジスさんの淡々とした語りがかえって印象的だった。地元に根を張って戦略を練りながら活動できる組織の自負なのかもしれない。

 最後に宗教系ではないが、ユニークなNGOをひとつ紹介しておきたい。インドネシアのいくつかの都市に支部を持つUrban Poor Linkage(都市貧困者ネット)である。ジョクジャカルタ支部では数年前から家政婦・メイドとして働く女性を支援していたが、今回の被災ではそのような出稼ぎ女性を通してその出身地で住宅再建活動を行っている。農村の貧困層が支援対象となる仕組みである。先ほど述べたように、被災地には他地域とつながりを持つ有力者が支援受入の窓口となることが多いが、それは村の中でも裕福な住民に偏りがちである。となると、確かにいろんなチャンネルがある方が草の根に支援が届く可能性は大きいであろう。いずれにしろ、被災住民の力を引き出すだけの信頼関係を持って、息の長い活動ができるかということが鍵になる。

 今回の訪問はインドネシア研究者としての私にとって、この被災の問題にどのように関心を持ちつづけるかということが重い課題となったことを痛感させた。

 



 
  ▲ジョクジャカルタ市南端にある財務開発監督庁

の建物    

       

 

▲被災地の住民に伝統医療の施術を行なうボラン

ティア、奥にいるのはAHIの元研修生シスウォさん

 
 ▲仮設テントで宗教の勉強をする子どもたち

 (バントゥル県のプサントレン)

 

 

▲都市貧困者ネットの代表、ワルダ・ハフィズさん

(2005年光州人権賞受賞者)と




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