シンタックスについて

 シンタックスとは,SPSSに計算させるための命令と思っておいてください。昔(といっても世紀の変わり目くらいの,つい最近(?)までですが)は,今のように,マウスでカチカチとボタンをクリックしてSPSSに命令を出すのではなく,このシンタックスを分析者が書いていたのです。
 今も現実的にはこのシンタックスでSPSSは命令を受けています。マウスでカチカチやっている作業は,このシンタックスを書いているに過ぎません。その証拠が出力ファイルに残っています。何か命令を出して計算させると,その結果は出力ファイルに表示されますが,その結果の最初に…

DESCRIPTIVES VARIABLES=a1 a2 a3 a4 b10 b12
 /STATISTICS=MEAN STDDEV MIN MAX.

などといった,おまじないのようなアルファベットが示されます。これがSPSSの実行した命令なのです。マウスでカチカチは,この命令を出すためにやっているわけです。
 このカチカチの作業は,非常にわかりやすいというメリットがありますが,反面とても面倒でもあります。肩が凝るとか,似たような作業を何度も繰り返すのでイライラするとか…。あと,SPSSへの命令を,SPSSを立ち上げているPCでしか作れないこととか。

 SPSSでの分析のことについてはちょっとわかってきたので,もっと効率よくSPSSを使いたいと思い始めた初級卒業者や,ルーティーンの分析が多い場合などは,このシンタックスを知っているとかなり楽ができるようになると思います。
 詳しいことはSPSSのヘルプで(英語ですが…)確認してください。ここでは,簡単なシンタックスを説明しておきます。

 まず,手っ取り早くシンタックスに出会うには,例えば「記述統計」を使って一つの変数の平均値を計算しようとカチカチとやってみてください。そして,通常なら「OK」ボタンを押すのですが,そうではなく,隣の「貼り付け」ボタンを押してみてください。すると「シンタックス」というウインドウがひらき,

DESCRIPTIVES VARIABLES=a1 (←ここの=の後ろが指定した変数名になっているはずです)
 /STATISTICS=MEAN STDDEV MIN MAX.

と表示されるはずです。これが,今カチカチとマウス操作で作った命令なのです。
 次に,この2行をドラッグして選択してください(命令の選択)。そしてコマンドを書き込んだウインドウの上にあるアイコンの,三角が右を向いたようなやつ(現在の位置を実行:双眼鏡の隣にある)をクリック,もしくはメニューにある「実行」から「現在の位置を実行」を選べば計算してくれます(命令の実行)。すると,通常「OK」を押したら出てくる結果と同じものが出力ファイルに表示されますね。
 ではシンタックス画面に戻り,a1(指定した変数名)の部分を別の変数名に変えてみてください。たとえばa2にするとか(なお,複数にする場合は,必ずそれぞれの変数名の間に半角スペースを入れてください)。そして,再度その2行をドラッグして選択し,実行してください。すると,変更した変数についての平均値などが出力ファイルに表示されるはずです。

 ここまでやってみるとわかると思いますが,マウスでカチカチとやらなくても,このシンタックスを自分で書いてしまえばSPSSは動くわけです。そしてシンタックスは,通常のテキストのようにコピー&ペーストができるので,たとえばワードを使って別の場所でシンタックスを書き,それをコピー&ペーストでシンタックスに貼り付けることもできます。シンタックスはそのまま保存できるので,以前作ったシンタックスを,変数名を書き替えるだけで別のデータに使うこともできます。
 また,「まずヒストグラムを作って,次に平均値を出し,相関係数を求めて,性差についてt検定をする」という一連の作業があったとします。しかし,マウスでカチカチの場合は,一連というよりも,順番に一つずつというイメージになりますね。ここでシンタックスを使えば,前もってこれらの作業を全部書いておくことで,すべての計算を一回の実行で終わらせることもできるわけです。

 もちろん,いつでもシンタックスの方が便利とは言えません。カチカチの方が楽な場合もあります。要は,うまく使い分けられればよいのです。時間のある時にでも取り組んでおいて損はないと思います。

 そうそう,いくつか老婆心ながら…

●シンタックスへは,相関係数あたりから入っていくのが理解しやすいかもしれません。このwebでも,少し詳しめに書いています。

●ある分析はマウスでカチカチと,次に別の分析をシンタックスで,その後,またマウスでカチカチ…というような,方法を混ぜた使い方もできます。

●分析の注記などは,コメントコマンドを使ってシンタックス中に記録しておくことができます。「*」と「. 」で区切られた「行」は,計算には無関係なものになります。
たとえば以下のwebを参照してください。

http://www.spss.co.jp/support/tech_info/syntax.html

●シンタックス作成には,最近のものではなく,昔のSPSSの本が参考になります。そこではシンタックスの説明と読み方が説明されています。現在のバージョンでは使えないものもありますが,試してみる価値はあるでしょう。

 まあ,使っているうちに慣れてきます。10年前の学生は,みんな自分でこれを書けるようになっていたのですから。