信頼性を求める 

 質問紙調査の場合,多くの場合に尺度の信頼性を検討する必要が出てくるでしょう(既存の尺度を使う場合にも,少なくともこれくらいはやっておいてください)。最も頻繁に使われる指標がα係数ですが,これは尺度の項目数が少なくなると係数が小さくなる,という特徴を持っています。(SPSS User's Guide (R4.0版)より;ある10項目尺度の平均相関係数が0.2であればアルファは0.71となります。項目の数が増えて25となると,アルファは0.86になります。)ですから,尺度項目が3とか4とかの場合には,全ての項目間の相関係数を算出し,それを眺めておくことが必要でしょう

 

以下の手順でダイアログボックスを開きます。

分析
 → スケール
  → 信頼性分析

 そうすると,「信頼性分析」ダイアログボックスが出てきます。左に変数のリストが,真ん中右側あたりに何も入っていない「項目」という名前のボックスがあります。もうおなじみの形式といってもいいでしょう。この状態で変数を選んで「OK」としてもよいのですが,これだけだと,人数と項目数,アルファ係数しか算出してくれません。これでは尺度の改善に必要な情報がたらないので,「統計」というボタンをクリックして下さい。

 「信頼性分析: 統計量」というダイアログボックスが出てくるはずです。ここで様々な項目にチェックを入れることで,それらの統計量も得ることができます。とりあえずは,「記述統計」「項目」「項目を削除したときの尺度」と,「項目間」「相関」にはチェックを入れておいてください。チェックが済めば,「続行」「信頼性分析」ダイアログボックスにもどり「OK」です。

 ここでは,x1,x2,x3,x4,x5という5項目が尺度項目の候補となっているとします。これらについて,上のような分析を行った結果が以下です。

   

 最初に出力されている「信頼性統計量」という表に,アルファ係数がのっています。x1,x2,x3,x4,x5という項目全部を使うと,α=.724という値になるということです。
 5項目でα係数が.724なら,高くはないものの悪いとも言いがたいと考えられます。しかし,他の出力を参考にすると,修正の必要もありそうです。

 次の表は「項目間の相関行列」とあるように,5項目間の相関係数が示されています。これは「項目間」「相関」にチェックを入れることによって計算されるものです。先にも書きましたが,項目数が少ない場合α計数は低くなる特性を持ちますので,この計算結果も合わせて参考にして下さい。
 すると,1項目だけ,他の項目との相関係数が低いものが見つかります。x2は,他のどの項目とも低い相関係数しかもちません。その他の項目同士では,中程度の相関係数が認められています。すなわち,x2はこの尺度に含めるべきかどうか要検討といえます。

 次が「項目合計統計量」という表です。この表では,「修正済み項目合計相関」や「項目が削除された場合の Cronbach のアルファ」という部分が重要になるでしょう。
 「修正済み項目合計相関」は,その項目得点と,その項目を除く他の項目の合計得点の相関係数です。尺度として項目を合計するということは,そこに含まれる各項目が同じ方向を向いていなくてはなりません。つまり,これが低い値しかとらない,ましてや負の相関が見られるような項目は削除したほうがいいと考えられます。今回の場合は,やはりx2は,他項目の合計得点とも低い相関しか認められないようです。
 次に,「項目が削除された場合の Cronbach のアルファ」ですが,その項目を除いた場合,α係数がいくつになるかを教えてくれます。α係数は内部一貫性を示すものですから,先の「修正済み項目合計相関」が低かった項目を除くと,α係数は高くなると考えられます。上の表では,5項目を全て用いた場合,α係数が.724なので,この欄に.724よりも高い値があれば,その項目の削除を検討する必要が出てくるわけです。このような観点から表をみると,.827という数字が目につきます。もしx2を除いた場合,α係数は.827になるということです。他の項目については,いずれもそれを除くとアルファ係数が.724から下がってしまうことがわかります。

 以上のような結果から,x2は削除すべきと考えられます。x2を除いて再度アルファ係数を計算してみると以下のようになりました。

 アルファ係数は.827になっていることが確認できます。また「項目合計統計量」をみても,これ以上削除すべきような項目は見あたりません。これでOKとすべきでしょう。

 以上の例は,比較的判断が簡単な場合といえます。もっと微妙な結果になることの方が多いでしょう。項目削除に決定的な基準はありません。“残しておきたいのだけれど,それを除くことでα係数は少し高くなる”といった事態に遭遇することも珍しくはありません。α係数の高さをとるか,項目内容にこだわるか,十分に考えてみてください。(もちろん極端な場合は別ですが…)

***********シンタックス
 信頼性の分析は,RELIABILITY を使います。ダイアログボックスで変数のみを指定してシンタックスに書き出すと,以下のようになります。アルファ係数だけを求めるのならばこれでよいでしょう。

RELIABILITY
 /VARIABLES=x1_x2_x3_x4_x5
 /SCALE('ALL VARIABLES') ALL
 /MODEL=ALPHA.

となります。半角アケの部分が見えにくいので,_(アンダーバー)にしてあります。

●上で説明した,いくつかの統計量をあわせて計算する場合。

RELIABILITY
 /VARIABLES=x1 x2 x3 x4 x5
 /SCALE('ALL VARIABLES') ALL
 /MODEL=ALPHA
 /STATISTICS=DESCRIPTIVE CORR
 /SUMMARY=TOTAL.

 ちなみに,信頼分析のダイアログボックスで,スケールラベルのところに「信頼感」と入力すると,/SCALE('ALL VARIABLES')が,/SCALE('信頼感')となります。

 また折半法は /MODEL=SPLITという指定になります。