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ボローニャプロセス以後の欧米を中心とした大学制度の変貌と新しい学問状況

研究概要

内容

この共同研究は、2006年度から2008年度にかけて行われた共同研究「EU統合の理念と現実」を引き継ぐものであり、特にその共同研究で行われた講演・研究発表・討議からいくつかの課題として明らかになった諸問題を受け止めようとするものである。そうした発表のうち、シェーンリッヒ・島田・メルクト・ブラントなどの講演から、ドイツの大学においても大きな変革が行われ、その結果としてEU内部の高等教育の分野で若干の混乱も生じ、大学の今後のあり方に関してさまざまな議論がわき起こっていることと同時に、そうした状況の中で脳神経倫理学などの新たな学問領域も確立されつつあることなどが具体的に明らかになった。これらの報告内容は日本ではまだほとんど知られていない事実であり貴重であった。
そこでこの共同研究では、とりわけボローニャ・プロセス以後のヨーロッパ諸大学――これまでの事例紹介・事例研究ではドイツに関する議論および情報が圧倒的に多く、ついでイギリスに関係するものであった――の制度的変貌(それはただ単にEU統合に伴ってEU内の各国の高等教育制度ないし研究制度を制度的にすり合わせるというだけでない)と、それに伴う学問状況の変化とに焦点をあわせて、現在のヨーロッパ主要国(イギリス・ドイツ・フランス・スペイン・オランダを差し当たりの研究対象にする予定である)においてどのような変化があり、それらが何を意味するのか、そしてさらにそうした変化に関して日本との共通性、あるいはまたアメリカとの共通性(アメリカの場合には、むしろその影響の問題も含まれるであろう)が指摘できるのかどうか、もしかりに指摘できるとすれば、そうした問題に対してどのように対処しようとしているのかを分析して明らかにすることが研究目的である。この場合には、できるだけ共同研究者の専門分野からのアプローチを重視して、その分野で特にボローニャ・プロセス以後にこれまでのパラダイムを揺るがしうるような変化があるのかどうか(典型的にはたとえば、世界的な規模で研究が急速に展開している脳神経科学および脳神経倫理学などが従来のパラダイムを越えうるのかどうかなど)、あるとすればそれらはヨーロッパ諸大学の制度的変貌とどのような関係にあるのかといった内容を中心にしながら、さらにまた、これらヨーロッパの大学および学問状況の変化に関して、アメリカの大学制度および学問状況の影響がどの程度にどのような形で確認できるのか、そしてそれを欧米の外部はどのように捉えているのかも射程に入れて講演・研究発表・討論を重ねて行きたい。したがって、こうした欧米を中心とした大学制度と学問状況の変貌を、日本をはじめとするアジアの場合と比較するという意味でも、中国などのアジアの研究者との研究交流も図って行きたい。
国内外の先行研究と本研究の独創性、学術の発展への貢献など研究の意義
ボローニャ・プロセスに関する研究は「大学史」の分野で研究が行われはじめてはいるものの、きわめて不十分であり、特にボローニャ・プロセスとその制度的・学問的影響に関する多角的研究についてはほとんど手を付けられていない状況だと言えよう。ドイツではいわゆる「フンボルト理念」に関する議論が活発に行われており、それらの議論がこの共同研究の内容とも密接に関わってくるが、まだ現在進行形であり、それがようやく英米圏に波及しつつある状況と言える。
それに比して国内ではその一部が潮木氏(名古屋大学名誉教授)などによって紹介されてはいるものの、その詳細な分析に到達した議論はまだほとんどなされていない。したがって、共同研究者の学問領域から見たボローニャ・プロセス以後のヨーロッパ諸大学の制度的変貌と、それに伴う学問状況の変化を総合的に、すなわち、アメリカの大学制度および学問状況がボローニャ・プロセスおよびヨーロッパの学問状況に与えた影響を含めて考察することは、とりわけ現代日本の学問状況および大学状況を考えると、それらに対して日本の大学が今後どのように対処・展開するのかを考える上できわめて学問的に示唆的であると思われる。しかも、そのような変化の中でこれまでにはない新たな学問的問いも提起されている。たとえば、脳神経倫理学などは世界的規模で同時に研究が展開しているが、それもこれらの制度的変化と無縁ではない。こうした学問的諸動向も踏まえてボローニャ・プロセス以後の欧米を中心とした大学制度および学問状況の変化を考察することは学問的にきわめて大きな意義を持ち、新たな学問的成果をもたらすと十分期待できる。
この共同研究ではできるだけ欧米および日本・アジアを比較・考察する「比較」の観点と方法とを取り入れて、潮木氏など内外の研究者を招聘しながら内外の重要な研究の共有化を図り、できるだけ学問的に実りのある研究成果を追い求めるとともに、南山大学の大学としてのあり方にも参考になるような成果も考慮してゆきたい。

共同研究者

※加藤 泰史 外国語学部ドイツ学科
横山 輝樹 人文学部人類文化学科
鈴木 貴之 人文学部人類文化学科
奥田 太郎 人文学部人類文化学科
ミカエル・カルマノ 人文学部心理人間学科
オリファ・バイアーライン 外国語学部ドイツ学科
アンドレアス・リースラント 外国語学部ドイツ学科
太田 達也 外国語学部ドイツ学科
大竹 弘二 外国語学部ドイツ学科
丸岡 高弘 外国語学部フランス学科
真野 倫平 外国語学部フランス学科
森 千賀子  外国語学部フランス学科
大井 由紀 外国語学部英米学科
武田 悠一 外国語学部英米学科
木下 登 外国語学部スペイン・ラテンアメリカ学科
小林 寧子 外国語学部アジア学科
杉原 桂太 情報理工学部情報システム数理学科
近藤 孝弘 名古屋大学教育発達科学研究科
松田 純 静岡大学人文学部社会学科
ギブソン松井 佳子 神田外国語大学英米語学科
島田 信吾 デュッセルドルフ大学哲学部現代日本学科

これまでの研究

[2009年度]   [2010年度]      
2009.09.19/ 第1回研究会 2010.05.18/ 講演会    
2009.11.07-.08/ 第2回研究会 2010.06.26/ 第1回研究会    
2009.12.05/ 第3回研究会 2010.07.24/ ワークショップ    
2010.01.09/ 第4回研究会 2010.09.18/

第2回研究会

   
    2011.01.08/

第3回研究会