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ソフトパワーと平和構築

研究目的

「ソフトパワー」と「平和構築」をキーワードに、南北アメリカおよび日本のソフトパワーの諸相を明らかにし、混迷する現代国際社会の平和構築に寄与することを共同研究の目的としている。ハードパワーの行使に対して、本学教員による日系人、インカイメージ、経済政策、ヒスパニック、ベトナム反戦運動、公民権運動、社会保障政策、ODA、和学、発掘プロジェクト、日系経営の側面から、平和構築へと至る事例を研究していく。その際に外交に携わっている大使の講演と討論も加え、現実性の高い研究成果を目指している。また、講演会を研究者、大学院生、学生に公開することにより、議論を多様に広くする一方、教育効果も狙っている。研究成果の方向性としては、2006年度〜2008年度の共同研究「多文化共生の諸相」研究会が最終成果物として出版した『地球時代の多文化共生の諸相:人が繋ぐ国際関係』(浅香幸枝編、行路社、2009年3月、375頁)のような形式を目指している。

研究概要

内容
研究のキーワードとなる「ソフトパワー」は、1989年にジョセフ・ナイ ハーバード大学教授が提唱した。初のアフリカ系大統領オバマ政権の次期駐日特命全権大使に予定され、その政策概念は影響力を増している。ナイは「文化、政治的価値、外交政策」の3資源からソフトパワーは構成されると指摘しつつ、経済力がソフトパワーとハードパワー(軍事力)に与える影響を見逃していない(Nye:2008、ix-xiv)。近年はハードパワーとソフトパワーを上手く組み合わせ効果を出すスマートパワーを提唱している。
 もう一つのキーワード「平和構築」は、初期的には戦争のない状態であるが、グローバル化の深化する現代の国際社会において、ガルトゥングの指摘する「構造的暴力」を減ずる方向に社会を向けることが、長期的に戦争の芽を摘むことになる。それは、日本外交の主要な柱である「人間の安全保障」概念とも係わっている。すなわち、人間の自由のために生存を保障し、能力を開発していく人間開発の重要性である。
本研究は、南北アメリカ地域と日本を分析対象として「平和構築」を目指し、ハードパワーの重要性を認識しながらも、それに過度に頼ることなく、経済力・文化力の2側面から政治・経済・社会・文化・哲学・教育・国際関係と多角的に分析を試みようとするものである。
国内外の先行研究と本研究の独創性
近年の先行研究として、Soft Power Superpowers: Cultural and National Assets of Japan and the United States (Watanabe Yasushi and David L. McConnell, eds. An East Gate Book,2008)、渡辺靖『アメリカン・センター:アメリカの国際文化戦略』(岩波書店、2008年)、フレデリック・マルテル『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、2009年)がある。ラテンアメリカ研究にソフトパワー概念を適用したのは、浅香幸枝「ラテンアメリカのジャポニスモ:エンリケ・ゴメス・カリーリョに見る日本へのまなざし」(南山大学ラテンアメリカ研究センター編『ラテンアメリカの諸相と展望』行路社、2004年pp.145-167)がある。
本研究の独創性は次の三点に集約することができる。第一に、ソフトパワー研究は今まで、概念の誕生地アメリカやその学術的影響を受けた日本を研究対象とするものが中心であり、本研究のようにラテンアメリカは射程に入ったことがあまりなかった。第二に、今までなされてきた研究は政治と文化に焦点が当たりすぎているように思う。ナイは経済力という要素を重視しており、その視点から自由貿易の利点も含めて考察する必要があると考えている。第三に、ナイがスマートパワーを主張するのに対して、この共同研究では平和構築を目指し、人間の安全保障実現のためにどのような政策が存在するか検討するところに特徴がある。すなわちグローバル化の進展、自由貿易の進展により生じる国内格差の問題の解消まで、本共同研究では踏み込んでいるからである。そうでなければ、紛争の根が絶えることがないと考える所以である。
学術の発展への貢献など研究の意義
大使などの政策担当者にも研究会に参加していただくことにより、より現実に即した研究成果が学術の場から貢献できる。実際に研究者と政策実施者が共同で最善の方法を求めて、時間をかけて共に討論し合う場は少なく、それゆえに学界と政界との距離は大きい。しかし、学術の発展には現実の政策担当者の現場の知恵とアカデミズムの体系性の交流が不可欠であると考える。幸い南山大学は、各国大使が喜んで講演に来て下さるという国際的に評価された大学である。この場を活かし、双方の交流ならびに若手研究者・学生を育てることは、研究と教育をリンクさせるのに有用であるばかりではなく、新しい研究の萌芽を生み出す活力になると考えられる。

共同研究者

※淺香 幸枝 総合政策学部総合政策学科
加藤 隆浩 外国語学部スペイン・ラテンアメリカ学科
安原 毅 外国語学部スペイン・ラテンアメリカ学科
牛田 千鶴 外国語学部スペイン・ラテンアメリカ学科
藤本 博 外国語学部英米学科
川島 正樹 外国語学部英米学科
山岸 敬和 外国語学部英米学科
デビット・ポッター 総合政策学部総合政策学科
アッセマ 庸代 人文学部心理人間学科
渡部 森哉 人文学部人類文化学科
ラハマン・コンダカル ビジネス研究科ビジネス専攻
2010年度より参加
二宮 正人 サンパウロ大学法学部
松本 アルベルト 神奈川大学外国語学部
二村 久則 名古屋大学大学院国際開発研究科
渡邊 頼純 慶應義塾大学総合政策学部
堀坂 浩太郎 上智大学外国語学部
太田 正登 金城学院大学現代社会学部

小田桐 確

慶應義塾大学理工学部
小池 康弘 愛知県立大学外国語学部
西村 秀人 名古屋大学大学院国際開発研究科
ブストス・ナザリオ 桜花学園大学人文学部
2011年度より参加
飯島 真里子 上智大学外国語学部
西脇 靖洋 上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究科

これまでの研究

[2009年度] [2010年度] [2011年度]  
2009.09.30/ 第1回研究会  2010.05.22/ 第5回研究会 2011.5.21/ 第11回研究会
2009.11.14/

第2回研究会

2010.6.26/ 第6回研究会 2011.10.15/ 第12回研究会
2010.01.30/

第3回研究会

2010.6.26/ アルゼンチンの夕べ    
2010.03.06/ 第4回研究会 2010.10.02/ 第7回研究会    
    2010.10.23/ 第8回研究会    
    2010.12.04/ 第9回研究会    
    2010.12.11/ 第10回研究会    

 

 

研究報告