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民主化過程の選挙:政党・候補者行動・有権者投票行動の国際比較研究─ASEANと体制移行国の事例から─

研究概要

本研究の目的
2009年度申請の本研究は2006年度、2007年度の2年間にわたって申請者が行った地域研究センター共同研究「民主化過程の選挙と政党・候補者行動ならびに有権者投票行動の國際比較研究―アジアとラテンアメリカの事例から」の発展的研究である。この研究は地域研究と比較政治学・選挙学との架橋を試みるものであり、研究目的は民主化過程にある主に大統領制の国々の選挙について、主要アクターである政党や候補者行動、有権者の投票行動のいずれかに焦点をあて、事例分析を行うことにより、地域研究からの民主化の問題への貢献をめざすものである。
本共同研究のメンバー3名は学内外から参加しており、専門地域も専門領域も横断的に構成されている。したがって外部から招く報告者を含めていずれのアクターをとりあげるかは当該研究者、報告者の問題関心の所在に応じて異なる。研究成果は2006年度「中間報告書」(3編の報告論文)、2007年度「最終成果報告書」(製本版)として公刊された(乞参照)。後者には7編の論文報告が掲載され、民主化、選挙、諸アクターの行動に関する実証研究に一定の成果をみた。しかし2年間という期間の短さもあり、残る課題も多かった。
具体的には
目的1:新たな研究視角
上述したように、本申請研究は基本的には2006年度、2007年度共同研究の第3年度に該当するものであるが、先の研究成果において十分扱えなかったり、欠けていた以下のような観点を新たに視点に組み入れて、より発展的な研究内容へ深めることが目的である。すなわち1.地域研究と理論との関係への問いかけの不十分さ、2.退行事例の少なさ、3.ポスト冷戦期のポスト社会主義体制移行の事例の欠如である。
1は、先進民主国の事例から生み出された民主化理論や選挙や政党モデルをもって民主化途上国の事例を分析することはどこまで適切かつ可能かという問いかけ;2は、先の共同研究の退行事例はタイのみであるのに対し、ほかの5事例は「問題ある民主化」ないしは「穏健な民主化」事例であり、バランスを欠いたこと;3は、ポスト冷戦期は80年代末から社会主義体制からの体制移行国が増えたことにより民主化過程国が急増した特徴があるにもかかわらず、先の共同研究では体制移行の事例が含まれなかった。民主化退行と体制移行国にあたる事例として、たとえばロシアの選挙、カンボジアの選挙、中国の民主化などが考えられる。これにより民主化過程を幅のある連続的指標でとらえることで広く事例を包摂することが可能となる。
目的2:単行本の出版

2007年度共同研究申請書において、2年後の成果物の単行本出版を申請したが、資金に余裕がなく、製本版の公刊にとどまった。しかし2008年度に共同研究成果の本の出版が認められたこともあり、本申請の目的のひとつは、研究成果を本として出版することにある。2007年度「最終成果報告書」(製本版)掲載の報告論文を、大幅修正、または書き下ろし論文を加え、「最終成果報告書」に掲載できなかった「インドネシア大統領選挙」(初年度報告)、さらに本申請が承認されれば、体制移行国の選挙にみる民主化を加えて、計10編の論文を掲載した単行本の出版を計画している。
本件研究の独自性と必要性
本研究が対象とする民主化過程にあるアジアやラテンアメリカの選挙の事例は、民主主義が確立し定着した先進民主国とは違い、定着への道程を歩み始めてもある一連の幅の中で政冶不安定、退行の可能性を内包している。それを「モデル逸脱」とか「政治意識の未熟さ」と結論してこと足れりとすることには意味がない。その意味で経済発展著しかったタイの選挙の最終帰結が政治的退行であったのは、興味あるところである。政冶変動と社会変動の相互浸透作用を背景に、選挙は手続き制度や政党の存在や数、パターンだけで捕捉しきれないものである。政党結成者、候補者、大衆有権者がどうのように選挙を認識し、行動するか、実証研究が重要である。そこで地域研究からの貢献は、伝統経路依存、政治経済社会構造、整合しない社会的亀裂の解明などに多くが期待される。

研究期間:1年間

共同研究者

※吉川 洋子  総合政策学部総合政策学科
加藤 隆浩 外国語学部スペイン・ラテンアメリカ学科
須藤 季夫 総合政策学部総合政策学科
星野 昌裕 総合政策学部総合政策学科
金 光旭 名城大学法学部研究員・非常勤講師

これまでの研究

[2009年度]
2009.10.02/

第1回シンポジウム

●研究成果報告

2006年・2007年、および2009年の成果をまとめて、『民主化過程の選挙―地域研究から見た政党・候補者・有権者』を刊行しました