能楽用語いろいろ

 

 

能と一口に言っても、たくさんの用語があります。
これから種類別にいろいろな用語を見ていきましょう。

基本用語舞・囃子の種類お囃子謡関係シテの流派

<基本用語>

 

能楽(のうがく)

能と狂言を合わせて能楽と言う。ただ、俗語では能=能楽のときもある。

能(のう)/舞囃子(まいばやし)/仕舞(しまい)

能は時間も長く、道具・人数・金がかかることから、 その能の一部分をとったものが演じられることもあります。
それが舞囃子・仕舞。

舞囃子が囃子をつけて、その演目の見せ所を、仕舞は舞と謡いだけ能の見せ所を見せます。
仕舞には大概、クセとキリがあり、クセは能の中で一番見せ所があるところで大体は弱い感じの舞 で、キリは能の最後の部分で強い感じの舞が多い。

シテ

舞の主役。シテはほとんどの場合、面をつけます。(つまり、演者の中で面をつけていたら、それが主役だとわかる)

ワキ

シテの相手役。面はつけない。大体は、僧など。

ツレ

能は、主要な登場人物は、シテとワキのみ。しかし、演目によっては、シテ・ワキ以外の 登場人物なども必要になります。(たとえば、主人公が身分が高い貴族だったりした場合は お供の人などが必要になるなど)その場合、シテ・ワキ以外の登場人物をすべてツレといいます。

囃子(はやし)

能の楽器隊または、楽器そのもののことを指す。
囃子は、大鼓(おおつづみ)、小鼓(こつづみ)、 笛、太鼓(たいこ)の4つのみ。
ただし、太鼓は主人公が神様や精霊のときの演目のみに使われる。
指揮者がいなく、互いに音を聞いて合わせる形をとる。ちなみに、大鼓は大皮とも言う。

地謡(じうたい)

能のコーラス隊またはコーラスそのものを指す。人数は4〜8人程度。 ただ、西洋のコーラスとは違い、 謡で、物語の進行を伝える。そして、謡い(歌)は、囃子の鼓の音を聞いて地頭(謡の長)が音を出し、 地頭に他の謡のメンバーが合わせる。

地頭(じがしら)

地謡の長。舞台で、地謡の後列中央に座っている。

後見(こうけん)

登場人物の演技を後ろで見て、装束を直したり、小道具を渡したり、片付けたりする役。 何も問題がなければ黒子と同じような役割だが、もし舞台中にシテに事故が生じたときには、その 代わりとして舞台に立つ。

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<舞・囃子の種類>

 

お調べ(おしらべ)

能の開演の前に行う、囃子の音あわせのこと。
チューニングみたいなものだが、お調べは ただ単に音を出すだけでなく、お調べという曲がある。

中ノ舞(ちゅうのまい)

生きている女性や旅僧などが行う舞。また祝福を表す意味でも舞われるときもあり。
『熊野』・『草子洗小町』など。

男舞(おとこまい)

面をつけない男性が主人公などが行う舞。中ノ舞と舞の型はほとんど同じだがやや強い。
『小袖曽我』『芦刈』など。

楽(がく)

神や精霊や中国の話の主人公が行う舞。元々は舞楽の旋律の模倣した舞。
『鶴亀』・『邯鄲』など。

翔り(かけり)

修羅道(地獄)に落ちた武士や物狂いの人物などが行う舞。苦しみを表す。
『経正』『玉鬘』など。

舞働(まいばたらき)

龍神や天狗や荒神などが行う舞い。太鼓が必ず入る。
『土蜘蛛』『竹生島』など。

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<お囃子>

 

能管(のうかん)

能で使われる竹製の横笛。
メロディーを担当する唯一の囃子。
話・主人公の感情のムードを表す。
シテは、この能管にあわせて舞うことが多い。(中ノ舞などで)

大鼓(おおつづみ)

かん高いハリのある音をだす鼓。
小鼓と共に囃子の拍子(リズム)をとる役割。
地頭は、この大鼓に 合わせて謡うことが多い。
大鼓を大皮(おおかわ)と言うときもある。

小鼓(こつづみ)

ポンポンとやさしくきれいな音を出す鼓。
大鼓と共に囃子の拍子(リズム)をとる役割。
時代劇などでよく見る鼓が小鼓。

太鼓(たいこ)

2本のバチを使って鳴らす鼓で、奥深い雄大な音を出す。
精霊や鬼・神などの 幻想的なものの動きや心理を表すときのみ使う。

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<謡関係>

 

謡本(うたいぼん)

謡いの楽譜のこと。 ただし、絶対的な音域はなく、中間の音を地謡のメンバーで決めて、音の上げ下げ・伸ばしだけで 謡う。

地頭(じがしら)

地謡の長。舞台で、地謡の後列中央に座っている。

弱吟・強吟(よわぎん・つよぎん)

謡いの方法。弱吟は滑らかに弱く謡い、強吟はハキハキ強く謡う。 3・4番目物などの女性が主役の内容は弱吟を、1・5番目物などの男や神・精霊などが主役の 内容は強吟を謡うことが多い。また、二番目物は、前半がなよなよした貴族の武士のときは弱吟を、 そして戦争に入ったら強吟を、と使い分けるときもあり。

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<シテの流派>

現在、シテの舞の流派は5つあります。
この5つの流派はほとんど同じ演目を演じますが、謡い方や舞の型や演出などが異なります。

 

観世流(かんぜりゅう)

観阿弥を祖とする流派。室町時代には唯一幕府の保護を受けた流派。
現在、一番規模が大きい。優美・繊細な芸風が特徴。
南山大学観世会はこの観世会の流派になります。

金春流(こんぱるりゅう)

6世紀の秦河勝(はたのかわかつ)を祖とする流派。奈良が本拠地。
古式を守り、室町時代の古風を残したのびのびとした雄大な型、拍子にこだわらない自由な謡いが 特徴。

宝生流(ほうしょうりゅう)

観阿弥の長兄の宝生大夫を祖とする流派。
室町末期には小田原の北条氏に、江戸時代に加賀藩 に重宝された。
重厚な芸風が特徴。

金剛流(こんごうりゅう)

法隆寺に属した大和猿楽四座の「坂戸座」を祖とする流派。
いろいろと面白い演出を考えだしてくれる(『土蜘蛛』の糸の使い方など)。

喜多流(きたりゅう)

江戸時代に金春流の喜多七大夫が徳川秀忠に仕えてつくった流派。
武士道的精神主義が濃く、質素 で豪快な気迫であることがと特徴。

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