仕舞 猩々キリ
五番目物
季節 秋(九月)
ストーリー(下線部が仕舞部分)
昔、高風という男がいました。親孝行の彼は、酒を売ると金持ちになるという不思議な夢を見て、市に酒を売って暮らしていました。ある日、一人の童子が高風の店に来て酒を買って飲むのですが、いくら飲んでも酔いません。驚いた高風は名を尋ねると、「私は海中に住む猩々です」と答え、酒壺を抱きかかえて海の中に入っていきました。 高風が酒壺を持って潯陽の江のほとりに猩々を待つことにすると、猩々は海面から浮かびでてきました。高風の心の素直さに感心して、酌んでも酌んでも尽きることなく酒の湧き出る壺を、彼に授けます。
やがて高風が夢から覚めると、河辺の様子は何も変わったところがなく、高風は夢かと思いましたが、ふと脇を見ると、泉のように酒の湧き出る壺がしっかりと残っていました。こうして、高風の家は末永く栄えたということです。
意気込み
猩々が酔って足元をよろよろさせ、倒れ臥す場面が見所です。枕扇という扇で顔を隠すところ(酔って寝入ったことを表します)にも注目してもらいたいです。