仕舞 胡蝶キリ

 

三番目物

季節 二月

 

ストーリー(下線部が仕舞部分)

 吉野の奥に住んでいた僧が、花の都を見物しようと上京しました。一条大宮の辺りに来ると、由緒ありげな古宮があり、御殿の階の下に梅が美しく咲いています。僧が立ち寄って眺めていると、人気の無さそうな家の中から、一人の若い女が現れて、声をかけてきました。そして女はこの御殿や梅の木について語ります。僧は不思議に思って、女の素性を問いただすと、実は自分が人間ではなく、胡蝶の精だと言うことを明かします。そして「春夏秋は草木の花から花へと戯れる身だが、まだ自分が姿を現わすことの出来ない早春に咲く梅花とだけは縁が無いのが悲しい。御僧に頼り、法華経の功徳を受けたい」と言って、荘子が夢で胡蝶になったという故事や、光源氏が童たちに胡蝶の舞を舞わせて舟遊びをしたという故事を語り、もう一度、御僧の夢の中でお会いしましょうと夕空に消えていきます。
 夜になって、僧が読経して木陰に仮寝をしていると、その夢に胡蝶の精が現れ、法華経の功力によって梅花とも縁を得たことを喜び、胡蝶の舞を見せると、やがて春の夜の明け行く霞の空に去って行きました

意気込み

 南山観世会の胡蝶は他の観世流の形とは舞が違う「南山胡蝶」として有名です。 喜びを、本当に華やかに表す舞になっていると思います。特に始まりの方に蝶が花から花へと舞うようなイメージがあると思っていますので、そこにご注目ください。