仕舞 殺生石キリ
五番目物
季節 九月
ストーリー(下線部が仕舞部分)
時は平安、処は那須野。ある時、玄翁(げんのう)という名の僧が、都(京都)に帰る途中、那須野(栃木県)に来ました。すると、ある石の周りを飛ぶ鳥がすべて石に目がけて落ちているのではありませんか?!その奇妙な状況を見た玄翁は不思議に思ってその石に近づこうとしました。そのときでした。一人の女が僧に、「その石に近づいてはいけない!」と声をかけてきたのは・・・。
彼女が言うには、「昔々、鳥羽上皇に仕えていた玉藻の前という絶世の美女がいました。実は彼女、国を滅ぼそうと狙っていた化生の物(変化するもの)、野干(狐)。あるとき、陰陽師のよって、その正体がばれてしまい、鳥羽上皇に部下に殺されてしまったのです。その無念(執心)が残ってしまい、その執心が石となりました。以来、その石は、石に近づくあらゆるものを殺す恐ろしい石なり、殺生石と呼ばれるようになりました。」続いてその女は次のように言ったのでした。「私がその殺生石の化身。」と・・。そして、その女性は石の中に消えていきました。
その不思議な出来事があったあと、玄翁は、ある男性から玉藻の前の詳細を教えてもらいます。彼女は、国を傾倒させようともろくんではいたのは確かであっただろうものの、その計画を実行させていないうちに無実の罪のまま殺されていたのでした。そこで、さぞかし無念だっただろうと感じた玄翁は殺生石に向かって供養を始めました。
すると、石が割れ、中から野干が現れ、自分の生前の行いを話しだします。「自分の正体がばれてしまい、都からこの那須野に逃れましたが、そこで追ってきたものが放った矢に当たって死んでしまいました。そして、その執心が石になりました。石になっても執心が残り、自分に近づくものを次々と殺していったのです。」と。しかし、野干は僧が自分を供養してくれたことに感謝を示します。そして、野干は、もう二度と悪事をしないと約束して成仏をしていくのでした。意気込み
野干が自分の行為を話すときは、それを再現して語ります。よって、舞部分は、「石が割れ野干が登場→語り部分を再現(那須野に追われる→矢を放たれ倒れる→殺生石になる)→僧に感謝する→成仏する」という形になります。それぞれの舞の動きが、どのような行為を表しているか『殺生石』はわかりやすいので、ぜひ、矢が放たれる部分を必要最低限の動きしかしない能の舞ではどのようになっているのか、石になる場面はどのように表現されるか、などをお楽しみにしてごらんいただければ光栄です。
仕事の合間をぬっての練習で、ほとんど我流で行うことになってしまったので、たくさんの方々にご迷惑おかけするかもしれません。しかし、この『殺生石』で一生で最期の私の舞になるので、最大限の力を振り絞ってがんばります。ちなみに私の舞のモットーは「優雅さは無理!正確さも無理!万人にウケがよい舞も無理!だから勢いでだけで人々をひきつける!」です。そのような、無謀とも言える『殺生石』を頑張ります!