仕舞 櫻川網之段
四番目物
季節 三月
ストーリー(下線部が仕舞部分)
東国の人商人は日向国で自ら身を売りたいと尋ねた少年を買い取り、少年の手紙と身代金とを少年の母に届けた。家の窮乏を見かね自ら身を売って東国へ下るとの少年の決意をしたためた手紙に、母親は驚き悲しみ、子の行方を尋ねようと泣く泣く故郷を彷徨い出る。三年後、常陸国磯部寺の僧が弟子にした少年を連れて櫻川へ花見に出かけ、流れる花を網で掬う狂女に遇う。狂乱の理由を問われると「わが子の名を櫻子といい、この川の名もまた櫻川というので、散る花を徒らにしないようにと思って掬っているのです」と答えた。女は、里人が「にわかに山嵐がして花が散るよ」というのを聞くと次第に狂乱し、花を掬い集めるが、本当に手にしたいのは木に咲く桜ではなく我が子・櫻子であると思い返し涙にくれる。狂乱の静まった後、僧に伴われた少年が自分こそ櫻子であると告げると、母は夢かと喜んで共に故郷へ帰っていった。
意気込み
わが子を思い、その思いのために狂う母親が今回の役所です。見せ場はなんと言っても、花を掬う型からその花片をはらりと水に落とすまでの流れでしょうか。散る花を惜しみ我が子を恋しむ母の心を、静かな型の内に表現できるように舞いたいと思います。