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| Vol. 3 ウィルフレド・カプソリ博士(その2): 甘えびの舟盛り |
| [外国語学部教授] センター長 加藤隆浩 |
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3年生が金沢でゼミ合宿をしたい、というので、来日中のカプソリ博士にも声をかけた。パンフレットに載っていた美しい雪の金沢がお気に召したのか、それともペルーにはない「ゼミ合宿」という行事への物珍しさがあってのことか、「何があっても行きたい」との返事が戻ってきた。 JRの特急列車のなかで「今夜は、加賀温泉に投宿し……」と学生が説明すると、「カガ・オンセン!」と言ったきり、博士はしばし大きな体を震わせて笑い転げている。きょとんとする学生に「われわれは総勢12名なのになぜオンセン(スペイン語で<オンセonce>は、11を意味する)なのか」「どうして特急列車でカガなのか」というや否やまたもや口もきけないくらい大爆笑をしている(その理由は下品になるので説明は省く。博士もそのように考えたようで説明はしなかった。教養人としてのたしなみなのだろう)。 博士は、根っからの駄洒落好きなのだ。そして、加賀温泉までの道中、日本語の音がスペイン語話者であるカプソリ先生にどのように聞こえ、それがどのような意味になるのかの説明が始まる。「皆さんは、私の話に相づちをうって『そう、そう』と時々うなずき合っていますが、私はそれを聞くと実はとてもヘンな気持ちになるのです。<ソーソー>というのは、馬の顔をなでて落ち着かせるための言葉(「ドードー」の意味)ですから。だから、私の話に<ソーソー>といってうなずかれると、なんだか自分が馬になったような気がするのです。ま、私はカバリェロ(紳士caballero)、というよりカバリョ(馬caballo)に近いかも知れませんがね。」 さて、12名がカガ・オンセンに到着すると、休憩をとるまもなく、カプソリ先生はすぐに学生を集め、1時間の自由時間に自分が書こうとしている卒論のテーマを紙に書いて提出するよう指示した。「辞書に頼らず、とにかく自分の言葉で何とか私に伝わるようなスペイン語にすればいい」。 宿に着いたらすぐに温泉浴やコンパが待っていると考えていた学生たちは予想外の課題にまごついた様子だったが、1時間後には一人の遅刻者もなく、博士の部屋に課題を持って集まってきた。カプソリ先生は、学生が用意した卒論の要旨を一つずつ読み上げ、そのテーマの意義、視点の重要性、先行研究などについて、それを書いた本人だけでなく、集まった学生全員にも分かるように解説を加えた。予定は1時間半だったが、博士の迫力に圧倒され、「ゼミ」は30分ほど延長して終わった。「少し多めに教えるのが良い。学ぶことに貪欲な若者により多くを与えないのであれば、それは教育の名に値しないのだから」と博士は私に呟いた。 ゼミから解放され、いよいよ大宴会場での夕食。特産の甘エビが大きな舟盛りで出された。「若い人ならもっと食べられるでしょう。どれだけでもおかわりを出しますからね」−仲居さんの言葉に、学生たちは猛烈な勢いで食べ始めた。初めのうちは、「この舟盛りなら3杯はいけるだろう」などと軽口をたたいていた彼らだったが、しだいにペースが落ち、結局は初めに出された量すら食べきることはできなかった。 学生たちがみな満足げにくつろぐのを見て、博士は目配せして言った。「加藤、見てみろ。たくさん食べたいと思っている若者には、ほんの少しだけでいい、余分に与えれば、みんなこのように満足するのだ。」 LLサイズのゆとりある浴衣を着たカプソリ先生もご満悦であった。
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