南山大学

 

研究活動 活動報告

災害における人類学の役割――東日本大震災の教訓

[開催日] 2011年07月23日(土)13:30〜19:00
[会場] 椙山女学園大学星ケ丘キャンパス「椙山人間交流会館」
[講師] 川島秀一、島田将喜、岩崎真幸、王暁葵、中原聖乃、後藤 明ほか
  本シンポジウムは日本文化人類学会中部地区研究懇談会主催・南山大学人類学研究所共催により、 中部人類学談話会連続フォーラム 「危機の人類学」第1回(第206回例会) として開催された。
 まず気仙沼から来た川島は長年海岸を中心に調査を行ってきている民俗学者であるが、今回の津波の後、気仙沼から岩手県の津波碑や津波石と、かつての津波で移動した集落あるいは移動後再び海岸に戻り被災した集落のあり方を報告した。そしてなぜ人々は浜に戻ってしまうのかを論じた。島田は自らのグループが霊長類調査のフィールドにしている金華山の状況を報告した。そして地元の神社、民宿、船会社などの人々を支援状況について報告し、グループで活動する重要性を指摘した。東北地方の民俗調査を専門としている岩崎は、当日の相馬市の状況を報告し、その後地震、津波に加え原発でコミュニティが分断されている福島県の状況を現地の視線で観察することによって住民目線の援助の必要性を訴えた。
 さらに中国四川大地震の際、中国政府がとった復興政策と援助について王がコメントしたが、日本でも学ぶ点がいくつかあったとの認識がフロアから示された。放射能の社会への影響を福島県で行って帰ったばかりの中原は行政や電力会社の対応の問題、放射能測定の問題など数多くの問題を現場から報告した。家族がいることもあって震災一週間後から数回現地入りしている後藤は東松島市における震災ボランティアの体験から、いかにボトムアップ的に民間ボランティアが立ち上がった経過の一端を報告した。
 会場はほぼ満員で熱気に満ち、予定していた時間を一時間近く延長して、今回の大災害における人類学の果たすべき役割について熱心な討論が行われた。

 

当日の様子

川島氏の発表

 

会場の様子