マウンテンヴュー便り

vol.6 ( December 20, 2002)

 今回は,こちらのコミュニティー・カレッジというものを紹介したいと思う。今年の九月から,私は通っているが,これは地域の人に開かれた大学(短大?)のようなものである。だから,通っている人の年齢層も幅広い。ユニバーシティー(四大)に行きたい人は,ここからトランスファーする人も多い。
 私は,ESL(English as a Second Language)と美術の授業をとっている。
 ESLにはやはり語学学校と同じように本当に様々な国の人がおり,上記したように年齢層も自分と同じ年齢の生徒から,かなり年上の人もいる。この授業は,名前どおり英語の勉強である。文法,文章読解,会話などなど各クラスに別れ,レベル分けもされている。日本人で,大学まで出ている人はほとんど,中学,高校で英語は一通り勉強している。私もそれプラス某英会話学校に,小学一年生から中学三年生まで通っていたが,それでもなお,身に付いてないことが多いなと実感してばかりである。特に,話すこと。使わないと言葉というものは身に付かない。こればかりは,自分の性格も関わっているんじゃあないか。私の場合,聞くことと,読むことは数ヶ月でかなりの程度伸びていると思うのに。
 次に,美術の授業である。美術と言っても,美術史とか批評とか言う面倒なものではなく,実際絵を描く授業である。これは,本当に凄いと自分で思ったほどで,この授業をとってから,自分の画風が完全に変わってしまったような気がする。日本だと公立の美大に入ろうとすると,筆記のほかに,デッサンのテストを受けないといけないので,塾などの美術研究所に長い間通ったり,先生に付いたりしないと中々難しく,狭き門というイメージがある。その面こちらでは,誰でも気軽に絵の勉強ができるし,芸術を志す人には本当に良い環境棚と思った。私は,絵は小さい頃から,大好きだし,自信があった。でも,小学校から,高校まで,授業以外は本当に絵を習ったことは無かったので,ここでの経験は感激ものであった。本当に私の絵は変わってしまった。今までの精巧だけれども,繊細なちまちました絵から,力強い絵に。こちらの自由な気風が,私の絵と心にも影響を与えたのかもしれない。

vol.5 (November 12, 2002)

 今年の春,こちらにやって来た時から,剣道をやっている。アメリカというと空手とか,ボクシングとかがポピュラーだなと思わせるところがあるが…本当にそうだ。剣道部に所属しているから,こっちに来ても続けたいという想いがあったからなのだが,実際こちらでとなると,全く始めのうちはイメージが湧かなかった。そして,インターネットやイエローページから情報収集して,今練習させてもらっているPalo Alto Kendo Dojoを見つけた。場所は,真宗のお寺のホールを借りている様である。内容は,殆ど日本と同じ。ただ説明が,英語と日本語混じりでなされるというだけである。
 この間,9月29日,Mauntain Viewで,NCKF(北加州剣道連盟)の20th Annual Championshipsが行われた。個人戦は,17歳以下の子供は年齢別に,そして女性の部,成人級の部,成人有段者の部と分けられた。その他に道場対抗団体戦(男子のみ)が行われた。いい機会なので,私も女性の部と,有段者個人に参加させてもらった。結果は両方ともシードで進み,しかし延長一本負けとなってしまった。しかも同じ道場の人としか当たらなかったので,ちょっと悔いが残る。あと,各道場の先生方が出場しているので,何だかごった煮だな,と思う節もある。
 私がざっと見たところでは,アメリカの剣道は,やはり日系,日本人移民パワーが勝っているなと思う。また,やっている人は本当に熱心だと言うに限る。ここから私も,少しばかりやる気をいただいたような気がする。それから,この大会で,南山大に昔留学していらした方にお会いしたので,「ああ,世界は狭いな。」と感じたことも付け足しておく。

vol.4 (October 08, 2002)

 こちらに来た目的のうちの一つ,自動車免許取得をこの七月果たした。日本では,今だと自動車学校に入ると初めに三十万位払うことになるらしいが,こっちではもっと安くなるということで,「え〜い,折角だから取ってしまえいっっ!」ということだ。
 こちらの免許取得の手順は,交通法規,交通記号のペーパーテスト→仮免→路上テスト→本免許,とこんな感じだ。しかも,仮免を持っていれば,本免許を持っている人が横に乗っている場合に限り,運転してもよろしいということになっている。ペーパーテストは英語以外の言語でも受験できるが,路上はそうではないようだ。私は流石に運転は初めてということで,ドライビングスクールで教えてもらうことにした。
 ドライビングスクールも日本と違い,レッスンの日に,先生が家まで迎えに来てくれる。家からイキナリ,一般道で練習スタートという形で,全く初めての人間には恐ろしい限りである。私の場合,一回のレッスンが百分で,それを九回終了して,路上テストに向かった。  
 テスト当日,家から自分で運転して,サンタクララDMVへ。DMVは,夏休みということもあって,かなりの混雑だ。先生に「DMVのまわりは,運転下手な人がウヨウヨしてるから気をつけて」と言われながらも,やっとのことで駐車した。登録をし,車の中で試験官を待つ。やってきたのは,体格のイイ女性試験官。始めに,ウインカーや,ブレーキライトなど車の各パーツの確認をし,試験官が乗り込み出発。彼女が乗り込んだら,車が僅かに沈んだ。きつそうだ。でも,私はそれどころではない。そこら辺の道を,交差点を通り,右折左折,最後のほうに直進バックをし,バックの時に曲がってしまったことを除いて,なんとか試験終了。路上テストは,減点形式で−15点を超えると不合格,私はギリギリ−12点で合格した。試験官に「直進バックもっと練習しなさいね」と付け足されたが...
 後から友人に聞くと,まったくの初心者で一回で路上テストを合格するのは,結構珍しいことだそうだ。六回落ち続けた友人もいる。これは,練習に付き合ってくれた父と,ドライビングスクールの先生に感謝するほか無い。
 しかし,私がここで一つ言える事は,私自身がこっちに来て少しばかり成長した事も一つだと思う。緊張しやすく,小心者で,ビビリの私が,テストとか審査と言う次元であまり焦らなくなったことは,大きな収穫だと思う。

vol.3 (August 24, 2002)

 夏になっても,こちらは日本の様に湿気も多くなく,蒸し暑いという気もしない。
 語学学校に通っていることは以前にも書いたが,数ヶ月前,中古の自転車を購入し,学校にもそれで通っている。自転車といっても,いわゆるマウンテンバイクというヤツで,私には少し大きめだ。日本でよく見かけるママチャリというタイプはこちらではなかなか見かけない。私は個人的にママチャリが扱いやすくて好きなのだが...家の前を,El Camino Realという大きな道沿いに真っすぐ行く。片方で三車線ぐらいあるので,交通量は多い。家をすぐ出ると,その道沿いに仕事を求めて,ヒスパニック系の人々がポツポツ並んでいる。「夏休みだしな,不法入国かな?」などと考えつつ,オドオドしながら通り過ぎ,ずっと道なりに二十分ほど走ると学校に着くという毎日の通学だ。初めは大型トレーラーとかにびびっていたが,慣れれば楽しいものだ。しかし,この前道が濡れていて,大ゴケしたので油断も禁物だと思う。
 もう一つ,こっちに来て不平があるのは,電化製品についてだ。日本では結構,電気屋さん(電化製品店,パソコン店)が好きな人というのがいるのではないか?私もそのうちの一人なのだが,こちらの電化製品を見ていて思うことは,日本の製品のほうが機能的で,コンパクトという点だ。一番腹立たしいのは,こちらの掃除機で,家にあるヤツはホースが付いているタイプではなく,片手式というので,かなり重い。台所と居間の掃除をしただけで,右腕が筋肉痛になってしまうほどだ。しかも小回りがきかない。日本のように,軽さを追求するというアタマがないのだろうか? こっちの奥様方は,こんなへヴィーなものでお掃除していらっしゃるのかしら? 他にも冷蔵庫やアイロンなど,(あと,水洗シャワートイレとか)日本って,電化製品は進んでるな,と思うことは多々ある。

vol.2 (July 02, 2002)

 日本は今梅雨の終わり頃だろうか?カリフォルニアは,湿気の多い日本と違い,乾燥しているのであまりうだるような暑さではない。しかし,朝夕と昼とでは気温の差が大きいと思う。
 ところで,先月の中頃に,スタンフォード大学の美術館で,チベットから黄帽派のお坊様達を呼んで,Sand Mandala Creationという催しが行われた。要するにチベット仏教の数人のお坊様たちが砂の曼陀羅を描くわけだ。これは凄いものが見られるチャンスではないか。あの辺境のチベットからわざわざ見せに来てくれるのだ。その曼陀羅というのは,五日間かけて,色とりどりの砂を使い,かなり精密に,素晴らしく細かい作業を経て出来上がる。しかし,その後,あんなにも時間をかけて,苦労して描いたものを,儀式の後,いとも簡単に,刷毛で消してしまうのだ。これは,仏教思想の中の無常というのを表しているものらしい。人の人生も,いくら一生懸命積み上げたものでも最後には無に帰してしまう,というところだろうか?アメリカの人達もこういうものに興味のある人は少なくないらしく,沢山の人達が見に来ていた。中でも,子供が多く,一生懸命見ていたのが印象に残っている。
 もう一つ,私の好きな分野の話だが,今私が住んでいる,マウンテンヴューからさほど遠くないSan Joseという町に,ウィンチェスターミステリーハウスというのがある。今は観光名所となっていて,日本でもとあるテレビ番組で取り上げられていた。ウィンチェスターというのは鉄砲,ライフルなどを作っていた一族で,第二次世界大戦などの戦争で,大儲けをしたそうだ。そしてそのミステリーハウスというのは,その御婦人が建てたお屋敷というわけだ。恐ろしく大きなお屋敷で,増築に増築を重ねたという感じだ。なぜ婦人がそんなことをしなければならなかったかという理由はこうだ。ウィンチェスターの銃のせいで大勢の人達が死んだ,その呪いで婦人の周りの人達が次々に死んでいく,悪霊の怨念から身を守るために婦人は,家を建て続けたというのだ。なるほど,そのお屋敷の中は階段がその先で詰まっていたり,ドアを開けると壁だったり,寝室がいくつもあったり,悪霊を欺くために作ったというのも,分かるような気がする。しかし,今となっては,こんな観光名所のようになってしまい,悪霊たちも沢山の人達が押しかけて居心地が悪いのではないだろうか?
 私がここで考えたのは,日本の霊場とアメリカのとの違いである。日本で霊的な場所という時,もっとこうジメジメーっとした,妖しげな生温い風が吹くようなところを想像する。その反面,アメリカでは(特に西海岸),気候も手伝って,カラッとしているが,そこだけ何か近づいてはいけないという気にさせるところを連想する。やはり,私からは日本の雨の匂いが離れない。

vol.1 (May 29, 2002)

 アメリカはカリフォルニア州,マウンテンヴューという町に今,私は住んでいる。こちらに来てもう一ヶ月ほど経ち,やっと生活にも慣れたところだ。
 こちらに来て一番驚いたことは,全てにおいて大きいこと。空が思いのほか高い,道路が日本の二,三倍,木々がここまで育つものかと疑うぐらい大きい。スーパーマーケットを覗けば,牛乳のボトルはほとんど三・七八リットル,服のサイズも,Lといっても日本のLとは違う(でも,驚いたことにオレンジなどの柑橘類,林檎などは日本より小さい)。バスに乗ると,車椅子のためのスペースなど,身障者への配慮(バリアフリー)も怠っていない。アメリカは心も広いのか!?
 話は変わって,五月の中旬頃,PawWowというネイティブアメリカンのお祭りのようなものがあり,小さい頃から,ピーターパンの中に出てくるタイガーリリーに憧れていた私は,是非とも見たいということで,早速出かけた。ネイティブアメリカンたちは,色とりどりの民族衣装を身に纏い,円になって,彼ら部族特有のダンスを踊っていた。小さな女の子までも,とても愛らしく踊っていた。しかし,民族衣装を着ている人の中には,白人の方もおり(おそらくネイティブアメリカンと結婚されたのだろう),サングラスをかけたネイティブの方もおり,車の中で民族衣装に着替えている方もおられるのを見ると,少し変な気もしないでもない。民族衣装もコスプレ感覚!?何てこともあり得るかもしれない。
 外国に来て,このようなカルチャーショックを受け,初めて自分の国のことがよく分かったような気がした。「日本は独特の文化を持っている国だ。」なんて住んでいる時に言われて何となくしか分からなかったけれども,今は明白に分かる。これは,すごい経験なんだろうと思うが,それがはっきり分かるのは日本に戻った時になりそうだ。