
2012年2月18日に行なわれた第5回社会倫理研究奨励賞選定委員会における厳正な審査の結果、下記論文を受賞論文と決定いたしました。
- 受賞論文 「「基礎的ケイパビリティの平等」の定式化とその含意―センの規範理論の明確化のための一論考―」
- 【掲載誌名】数理社会学会編『理論と方法』vol. 26 No.2、2011年9月30日、339-354頁
- 著者 玉手 慎太郎
小林傳司(第五回社会倫理研究奨励賞選定委員会委員長)
今回の応募件数は11篇であった。例年応募のある生命倫理や応用倫理に関する論文に加え、科学技術倫理を扱うもの、正面から「人生の意味」を問うもの、クィア理論に対する神学的応答の試みなど多様性が広がった感がある。他方、政治学、経済学の視点から社会倫理の問題に取り組んだ論文については、力作揃いであった。
11篇の中から第一次選考によって5篇を選び、審査委員による合議で慎重に審査した。議論は白熱したが、視点の新鮮さ、アプローチのユニークさ、そして今後の研究の発展の可能性などの観点から評価の高かった、玉手慎太郎氏の「「基礎的ケイパビリティの平等」の定式化とその含意−センの規範理論の明確化のための一論考−」を第五回社会倫理研究奨励賞の受賞作とすることを委員全員一致で決定した。
玉手論文は、センのケイパビリティアプローチに含まれる曖昧性を「ケイパビリティの平等」と「基礎的ケイパビリティの平等(BCE)」を明確に区別することによって解消し、BCEを他の規範理論と比較可能にするための理論的地平を開拓しようとする意欲作である。その際、あえて公理論的手法によるBCEの定式化を試み、問題の所在を明確化するとともに概念を明晰なものにすることに成功しているといえる。これにより今後、責任と平等をめぐる規範的理論が生産的な成果を生み出す土俵が準備されていくことが期待される。もとより、概念の明晰化と今後の検討の土俵整備を主たる目的とした論文であり、著者本人の規範的主張が展開されていないことを瑕疵とは言わないが、ぜひ今後はその展開に挑戦してもらいたい、というのが審査員全員の一致した希望であったことを付記しておく。
自薦・他薦併せて11篇の応募論文の中から、最終審査に残った最終候補論文は以下の通りです。