能楽用語ー型付け

 

型付けとは?

能は、西洋演劇とは違い、動きを最小限にとどめた「型」がしっかり決まっています。
基本的には、扇を右手に持ち、偶数の歩数で前に進み、奇数の歩数で後ろに下がります。
扇は演目によって開いていたり、閉じていたりします。
そして扇の形でいろんなもの(刀や枕など)を表します。
その動きを演目に合わせて言葉で指示した物が「型付け」です。

この動きは何を表しているものか、を覚えてしまえば、演者が今、何をやっているのか、どういう気持ちなのか、が簡単にわかってしまうのです 。

※注意:型はあくまで一例です。また、型は観世流を基本として描いていますので、他の流派とは 異なるものもあります。

下居(したい)

→片ひざを立てて座る形
型の表す意味→舞の始まり・終わり
よく使われる演目→すべての演目

サシ込ミ(さしこみ)

→扇を持った右手を下から前に出しながら前に進む形
型の表す意味→前に進む。舞の基本的な動き。
よく使われる演目→すべての演目

開キ(ひらき)

→両手を開きながら、後ろに下がる形
型の表す意味→後ろに下がる。
また、ただ単にサシ込ミなどで前に行きすぎたときの 場所調整で後ろに下がる際に使われる。
よく使われる演目→すべての演目

足拍子(あしびょうし)

→足で舞台の床板を踏んで音を出す。
型の表す意味→演目によって意味が異なる。
また、舞の区切りを表すために使われるときも ある。
よく使われる演目→すべての演目。
とくに神が登場するものに多い。

サシ

→扇を持った右手を肩の横に動かし、その後前へ持ってくる形。
(サシ込ミが下から前に扇を持っていくのに対して、サシは横から前に扇を持っていく)
型の表す意味→前に進む。
これからどこかに出発する直前を表すときもある。
よく使われる演目→すべての演目

角トリ(すみとり)

→舞台の角(すみ:客席から見て、舞台の左側の客席に最も近いところ)に
行く際に、 角で斜めに止まってしまうので、
その体を正面に戻す型。
足を左に少しねじって、正面に向いたあとで足を そろえる。
型の強さによって角トリは形が異なる。
今回の絵は弱いときの角トリ。
型の表す意味→正面に向きなおし。
よく使われる演目→すべての演目

羽根扇(はねおうぎ)

→左手で開いた扇を持って、肩の右側から左へ大きく扇を動かす。
型の表す意味→風の動きを表す。
よく使われる演目→天女もの(『羽衣』など)

雲扇(くものおうぎ)

→右手で開いた扇を持ち、両手で体の前に扇をいったん持っていき、
その後斜め上下に両手を開く。
型の表す意味→空を見上げる様子を表す。
よく使われる演目→敵討ちや戦いに行く意気込みを表す話で使われる。
雲扇をしていざ戦いへ!という 形になる。
(『小袖曽我』など)

合掌(がっしょう)

→伸ばした両腕の指先を前であわせ、その後、扇を体の内側へたおす。
型の表す意味→合掌(亡霊の前で手を合わせて供養などをする。)
よく使われる演目→亡霊が僧に供養される話によく出てくる。
亡霊物は修羅物に多い。