アジアにおけるインフラ整備に関し、豊富な現地調査に基づき貴重な研究を重ねてこられた2人の先生をお招きし、スリランカおよびメコン地域の開発援助プロジェクトの事例をご紹介いただくとともに、これらのプロジェクトが地域社会にもたらす様々な効果についてお話を頂いた。
新海先生は、スリランカの灌漑用水プロジェクトについてその概要を述べられたのち、灌漑設備の整備が「農民の所得を高め、彼らが“慢性的貧困”に陥るリスクを減少させる」効果をもたらすのみならず、「農民の資金借り入れ能力を高め、彼らが非収穫期に“一時的貧困”に陥るリスクを減少させる」効果をもたらす可能性を指摘し、かつ、実証分析でそれらの効果が確認された点についてお話を頂いた。
藤村先生は、メコン地域の越境道路プロジェクトについてその概要を述べられたのち、国際的な道路網の整備が輸送コストの低下をもたらすのみならず、貿易や直接投資の拡大を通じて地域経済全体の発展をもたらす効果を指摘し、かつ、実証分析でその効果が確認された点についてお話を頂いた。ただし、関係各国にもたらされる利益が一様ではないため、どのように各国で調整を行うかが大きな課題となる点についてご説明を頂いた。
全体で90分という限られた時間ではあったが、約200名の受講者にとって「開発援助の評価」というテーマに関する研究のフロンティアを学び、理解を深める貴重な機会になったと思われる。
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